[Vol.1316] 抜け穴2-2:中国への輸出拡大を促す可能性あり

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反落などで。82.74ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反落などで。1,726.25ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。23年01月限は12,390元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。22年10月限は672.1元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで876.8ドル(前日比2.5ドル拡大)、円建てで4,047円(前日比43円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(9月8日 11時35分頃 6番限)
7,914円/g
白金 3,867円/g
ゴム 217.5円/kg
とうもろこし 50,160円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 8月5日午前10時35分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「抜け穴2-2:中国への輸出拡大を促す可能性あり」

前回は、「抜け穴2-1:中国への輸出拡大を促す可能性あり」として、ロシアと中国間の主要な石油パイプラインの位置を確認しました。

今回は、「抜け穴2-2:中国への輸出拡大を促す可能性あり」として、中国の国別原油輸入単価(筆者推計)について、述べます。

筆者の推計では以下のグラフのとおり、中国のロシア産原油の輸入単価は足元、国際価格よりもおよそ2割安い水準です(サウジ産は国際価格におおむね連動)。2022年7月、中国のサウジ産原油の輸入単価はおよそ116ドル、ロシア産は94ドルでした(ともに1バレル≒159リットルあたり)。

ロシアが原油を中国に安く売っている可能性があることについて、ある人は「お友達価格」、と言いました。筆者もそう感じます。

ウクライナ危機勃発後、ロシア政府の声明に「非友好国」という言葉が頻繁に出ています。この「非友好国」は主に西側諸国を指すのですが、そうでない国はある意味「友好国」であり、そうした「友好国」にはそれなりの価格で売る、という流れが目立ち始めていると考えられます。

G7は上限価格の枠組みを、原油は12月5日、石油製品は来年2月5日に導入するとしています。仮に原油の上限価格が、中国におけるロシア産原油の輸入単価とさほど変わらなかった場合、ロシア産原油の中国への流入は止まらないでしょう。

上限よりも多少高くても、お友達価格で買うメリットがあれば、中国は買うでしょう。中国がロシア産原油の購入を続けた場合、ロシアと中国の関係がさらに緊密化する、中国のエネルギー安全保障がより強固になる、ロシアの収入が一定程度確保される、などの影響が想定されます。

陸続きの中国という大きな存在が、G7の合意内容の抜け穴になっていると言えるでしょう。

図:中国の国別原油輸入単価(筆者推計) 単位:ドル/バレル


出所:ブルームバーグのデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。