[Vol.1342] ホンネとタテマエの間で揺れる欧州主要国

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反落。米主要株価指数の反落などで。82.06ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,645.60ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。23年01月限は12,655元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。22年12月限は662.6元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで752.9ドル(前日比4.4ドル拡大)、円建てで3,746円(前日比1円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(10月19日 17時02分頃 6番限)
7,865円/g
白金 4,119円/g
ゴム 227.9円/kg
とうもろこし(まだ出来ず)
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 8月5日午前10時35分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「ホンネとタテマエの間で揺れる欧州主要国」

前回は、「なぜ『ウクライナ危機』は起きたのか!?」として、筆者が考えるウクライナ危機が発生した背景について、述べました。

今回は、「ホンネとタテマエの間で揺れる欧州主要国」として、EUのエネルギー(石炭、石油、天然ガスなど)輸入額の推移を確認します。

前回、ウクライナ危機が勃発した背景の一つ「(2)危機を勃発させた後の絵を描くことができたこと」、の中で述べた「西側の体力低下」が具体的に進行している例を述べます。これは「反西側体制」構築を許す一因です。

「自己矛盾」は、どの時代・どの場面においても良い印象を与えません。「自己矛盾」を抱えている人・団体・モノを見ると、隙(すき)があるように見えるものです。この意味で、今EU(欧州連合、ドイツ、フランス、イタリアなど欧州の主要27カ国)は世界に隙を見せつけてしまっていると言えます。

以下のグラフのとおり、ウクライナ危機勃発後、EUのロシアからのエネルギー輸入量は急減していません。域外からのエネルギー輸入額の20%強が、まだロシア由来です(2022年8月時点)。

危機勃発直後から、EUは「脱ロシア(ロシア依存度引き下げ)」を進めるべく、ロシアへの「制裁を強化する」(「買わない西側」を強化する)と同時に、これまでの流れである「脱炭素」をさらに強化する(化石燃料を使わないようにする≒ロシアから同燃料を買わないようにする)ことを標榜してきました。

「脱炭素」を徹底すれば、「脱ロシア」を進められるはずだったのかもしれませんが、実態は全くの道半ばと言わざるを得ません。(ロシアは自分から離れられなくなっているEUを見て、ほくそ笑んでいるかもしれません)

「脱ロシア」を徹底できないのは、EUの体力不足(化石燃料の消費を減らすための体力がないこと)が主因でしょう。「脱ロシア」を標榜して実現できていない「自己矛盾」は、西側(EUの多くは西側に分類される)の体力低下をうかがわせる実例と言えるでしょう。

図:EUのエネルギー(石炭、石油、天然ガスなど)輸入額 単位:百万ユーロ
図:EUのエネルギー(石炭、石油、天然ガスなど)輸入額 単位:百万ユーロ

出所:EURO STATのデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。