[Vol.1355] 1年前の「COP26」での涙

著者:吉田 哲
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原油反落。米主要株価指数の反落などで。91.47ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,674.95ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。23年01月限は12,555元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。22年12月限は714.7元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで688.4ドル(前日比0.95ドル拡大)、円建てで3,455円(前日比115円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(11月8日 13時00分頃 6番限)
7,857円/g
白金 4,402円/g
ゴム 219.1円/kg
とうもろこし 50,170円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 8月5日午前10時35分時点)

●NYプラチナ先物(期近) 月足  単位:ドル/トロイオンス
NYプラチナ先物(期近) 月足  単位:ドル/トロイオンス

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「1年前の『COP26』での涙」
前回は、「『COP27』とは?」として、COP27の前提となる「パリ協定」について、確認をしました。

今回は、「1年前の『COP26』での涙」として、昨年開催されたCOP26を振り返ります。

1年前、英国のグラスゴーで開催された「COP26」では、開催期間が1日延長され、「グラスゴー気候合意」が採択されました。それにより、抑えるべき気温の上昇幅を「2度未満」としたパリ協定よりも踏み込んだ「1.5度未満」が、事実上の共通目標になりました。

「1.5度未満」が明記された内容で合意できたことは「歴史的」とされた一方、「妥協の産物」ともされました。合意直前で文言が修正されたためです。議長が想定した「石炭使用の段階的な廃止の加速を呼びかけ」という文言に待ったがかかったのです。

屈指の化石燃料生産国であるサウジアラビアの代表は、「特定のエネルギー資源に偏見を持つべきではない」、屈指の火力発電向け石炭消費国であるインドの代表は、「途上国には化石燃料の使用を続ける権利がある」などと、当初の議長の想定に待ったをかけました。

これを受け、議長は文言を、「石炭使用の段階的な廃止の加速を呼びかけ」→「排出削減対策が取られていない石炭火力発電の段階的な廃止」→「(同)段階的な廃止のための努力を加速する」→「(同)段階的な削減」と、表現を大幅に弱め、ようやく合意に至りました。

会の最後、議長は涙ぐみました。化石燃料の中でも燃焼時の温室効果ガス排出量は比較的多い「石炭」の「廃止」を、合意文書に盛り込みことができなかったためです。

「パリ協定」が気候変動を「人類の共通の関心事」として、対策を進める上で人権や世代間の均衡など、多岐にわたる配慮をする必要があることを前提としているため、容易に合意にこぎつけることはできません。

図:英国グラスゴーで開催された「COP26」(2021年)
図:英国グラスゴーで開催された「COP26」(2021年)

出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。