サウジの原油在庫、数カ月以内に枯渇か!?

著者:吉田 哲
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原油(WTI先物)反落。主要株価指数の反落などで。58.09ドル/バレル近辺で推移。

金反落。米10年債利回りの上昇などで。1,530.55ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。20年01月限は11,835元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。19年11月限は462.0元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで572.85ドル(前日比4.75ドル縮小)、円建てで1,959円(前日比8円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

東京市場は以下のとおり。(9月24日 17時22分頃 先限)
 5,256円/g 白金 3,297円/g 原油 38,730円/kl
ゴム 166.3円/kg とうもろこし 23,740円/t

●東京原油 1時間足 (単位:円/キロリットル)


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードCX」より

●本日のグラフ「サウジの原油在庫、数カ月以内に枯渇か!?」

前回は「サウジは生産量だけでなく、原油在庫も半減か!?」として、共同機関データイニシアティブ(JODI)のデータを参照し、サウジドローン事件によるサウジの原油在庫への影響について書きました。

今回は、より精度を高めるべく、前回の内容に「輸出量」という考え方を反映させ、改めて書きます。

JODI(共同機関データイニシアティブ)のデータによれば、2019年7月末時点で、サウジの原油在庫は1億7,979万6,000バレルでした。また、同月のサウジの原油輸出量は原油生産量のおよそ72%でした。

ドローン事件の影響でサウジの原油生産量は一時的に半減した(日量570万バレル減少)と報じられました。このことから、同国の原油輸出量はその72%にあたる日量およそ400万バレルが減少した可能性があります。

仮に、攻撃を受けた9月14日から9月30日までの17日間、生産が復旧せず、在庫を取り崩して輸出を続けたとすると、サウジは原油在庫6,800万バレル(日量400万バレル×17日間)を放出する計算になります。

7月末時点の在庫から6,800万バレルを差し引くと、9月30日時点でサウジの在庫は1億1,179万6,000バレルになります。7月比でおよそ38%減です(実際には生産回復に伴い、在庫を取り崩す量は6,800万バレルよりも少なくなる模様)。

また、在庫の量が38%減となった上で、生産の完全回復が10月以降に持ち越しになり在庫を取り崩す期間が長くなったり、新たな攻撃があり、さらに生産が減少した場合、10月以降、1カ月から数カ月程度で在庫が底をつく可能性が出てきます(1億1,179万6,000バレル÷日量400万バレル≒28日間)。

サウジの原油在庫はJODIのデータよりも少ない可能性があると指摘をする報道もあり、サウジの原油在庫をめぐる状況は、日に日に不安定さを増していると言えます。

図:サウジの原油在庫 単位:百万バレル


出所:JODI(共同機関データイニシアティブ)のデータをもとに筆者作成

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。