「10大リスク」から2023年の商品市場を読む(1)

著者:菊川 弘之
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 毎年、年初に「Top Risks」(10大リスク)で注目されるユーラシアグループが発足して25年になるが、昨年は実際に戦争(ロシアによるウクライナ侵攻)が起きており、予想よりも現実の方が先行してきた感もあるが、「10大リスク」が今年のマーケットに与える影響を探ってみたい。

(1)Rogue Russia:ならず者国家ロシア

 原油・天然ガス・穀物市場に大きな影響を与えたロシアによるウクライナ侵攻だが、「10大リスク」では、「もうロシアには戦争に勝つための軍事的選択肢が残っていない。」と指摘されたが、ロシアも欧米も「ロシアvsNATO」のような欧州大戦・世界大戦に陥ることを避けたいことは一致している。

 イアン・ブレマー家族は東欧からの移民で、「貧しい生活から脱出できたのは米国のおかげであり、生まれ変わっても住みたい国は米国である」と公言していることから、ロシアに関する彼の分析は一定程度、差し引いてみる必要があるかもしれない。

 米国の目的は、ウクライナの勝利ではなく、ウクライナ人を用いて、スラブ人通しの戦いを通じてロシアを弱体化させることだ。ウクライナが負けはしないが勝利しない程度の武器供与だけを続けてきたが、中間選挙で下院を共和党が獲ったことで、これまでのようなウクライナ支援向けの予算は通らない可能性は高く、ウクライナの勝利もあり得ないシナリオだ。

 ロシアも既にウクライナ国土の20%を抑えており、ここを放棄するシナリオもない。西側連合は「自由と民主主義」が普遍的で絶対に正しいと考えている一方、ロシアはこの価値観(LGPT含む)は、ロシア、中国、インド、中東、アフリカ、中南米、東南アジアなどの諸国には馴染まないと考えている。それぞれの国家と民族は、独自文化と掟を持っているというプーチン大統領発言(2022/10/27:ヴァルダイ会議)に共感している国家は多いと、仏歴史学者のエマニエル・トッド氏は指摘している。

 価値観戦争は長期化する可能性は高い。

ウクライナ侵攻「戦況図」
米シンクタンク「戦争研究所」と「アメリカン・エンタープライズ研究所」から
 

このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

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