「10大リスク」から2023年の商品市場を読む(4)

著者:菊川 弘之
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(7)Arrested global development:世界的発展の急停止

 気候変動は、異常気象がサプライチェーンや貿易形態を混乱させ、食糧やエネルギー市場にストレスを与え、脅威を増大させる。と指摘した。

 50年振り・100年振りと言った異常気象が世界的に頻発する中、商品市場の供給懸念や、金への安全資産への投資に繋がりやすい。パキスタンでは洪水による不作、既に小麦、砂糖、コメ(飼料米)の輸出制限に踏み切っているインドでは綿花も輸出制限されるのでは、と懸念されている。国内需要を優先させるため、食料輸出大国のインドが資源の「囲い込み」に転じている。パキスタンの生産回復も数年はかかる見通しで、他生産国がカバーすることは困難な状況だ。

 「ゼロコロナ政策」から「フルコロナ政策」に転じ、急速に中国の集団免疫が進み、中国需要が持ち直すとの観測も、需給逼迫懸念を高めている一因だ。

 小麦価格は豪州の過去最高の豊作やウクライナ産の輸出再開で値を下げているものの、国連食糧農業機関(FAO)世界食料価格指数は、高止まりのままだ。季節的な穀物市場のスプリングラリーの時期には、ウクライナの穀物在庫が払底する。西側諸国が支援するだろうが、西側穀物在庫自体が、適正水準を下回る危機的水準であり、北半球の種蒔きの時期~秋の収穫期までの天候相場期には上値リスクが例年以上に高まりそうだ。

2022年の世界の主な異常気象
 

このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

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