「10大リスク」から2023年の商品市場を読む(4)

著者:菊川 弘之
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(8)Divided States of America:分断国家アメリカ

 米国人のおよそ3分の2は、対立する政党の党員を単に間違っているというだけでなく、不誠実で不道徳であり、国そのものを脅かす存在であるとみなしている。そして、脅迫や暴力が政治的に正当化されるという考え方が両党の党員の間で高まっている。

 この流れは、来年の大統領選挙に向けて、より強化され、暴力化していきそうだ。更に、米国全体が内向きになるリスクもあるだろう。米覇権・基軸通貨体制の揺らぎが意識されてくるなら、金にとっては、大きな上げ要因となる。

 ウクライナ支援に積極的なのは、米国・英国・カナダだが、カナダはウクライナからの移民が多く民族的な要因が多いが、米国・英国においては国民の内政不満を外交に転じる側面もありそうだ。

 好戦論で有名な米ランド研究所が「ウクライナ戦争を長引かせると米国の国益にならない。早く終わらせた方が良い」と主張する論文「戦争を長引かせるな」(Avoiding a Long War)を発表。

 ウクライナ戦争が長引くほど、対露経済制裁の反動で世界のエネルギーや食糧の価格が高騰して米国に不利になり、軍事と経済の両面での米国のウクライナ支援のコストも上がると指摘。また戦争が長引くほど、ロシアと中国との結束が強まって中国に有利になるし、米国がウクライナ支援に資金と国力を取られるほど、米国は中国と敵対するための余裕が不足し、中国が米国を押しのけて台頭することを阻止できなくなると警告。

 「偵察用」だとする中国の気球をアメリカが、大西洋上空で撃墜したことについて中国外務省は「強烈な不満と抗議」を発表。米中対立も激化の方向に仕向けられている感触。米大統領選挙に向けての候補者討論会が夏に始まるが、平時相場ではない有事相場である現在、経済合理性に反する決定などが波乱要因となる可能性は、大きい。

米国中間選挙開票結果
 

このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

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