[Vol.1416] 金(ゴールド)保有を拡大させている国はどこ?

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。75.90ドル/バレル近辺で推移。

金反発。米10年債利回りの反落などで。1,884.70ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。23年05月限は12,715元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。23年03月限は530.3元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで906.2ドル(前日比1.3ドル拡大)、円建てで3,808円(前日比23円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(2月7日 17時34分頃 6番限)
7,940円/g
白金 4,132円/g
ゴム 226.8円/kg
とうもろこし 43,730円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 8月5日午前10時35分時点)

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス
NY金先物(期近) 日足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「金(ゴールド)保有を拡大させている国はどこ?」
前回は、「中央銀行の金(ゴールド)購入量は半世紀ぶり高水準」として、中央銀行の金(ゴールド)購入量を確認しました。

今回は、「金(ゴールド)保有を拡大させている国はどこ?」として、金(ゴールド)保有増加国上位とそれらの国の自由民主主義指数を、確認します。

以下の図は、2013年末から2022年末にかけて、金(ゴールド)の保有量が増えた国の上位15位と、それらの国々の「自由民主主義指数」を示しています(同指数は2013年と2021年を比較。2022年版はまだ公表されていない)。

同期間、最も金(ゴールド)の保有量を増やしたのは「ロシア」でした(1,263トン増加)。中国(956トン増加)、トルコ(426トン増加)と続きます。「新興国」というキーワードが浮上しますが、「自由民主主義指数」を加味して一歩踏み込むと、別のキーワードが浮上します。

スウェーデンのヨーテボリ大学のV-Dem研究所は、行政の抑制と均衡、市民の自由の尊重、法の支配、立法府と司法の独立性など、自由・民主主義的な傾向を示す複数の側面から、「自由民主主義指数」を算出しています。

同指数は、0から1の間で決まります。0に近ければ近いほど「非民主的」、1に近ければ近いほど「民主的」という意味です。例えば、表内の「中国」の、2013年の同指数は「0.05」、2021年は「0.04」でした(「ほぼ0」が長期的に継続)。強い「非民主的」な傾向が、長期化していることがうかがえます。

同期間で金(ゴールド)の保有量を増やした国々の多くが「非民主的」です。こうした国々が、冒頭で示したグラフ「中央銀行の金(ゴールド)購入量」における2013年以降の純購入増加に寄与したわけです。

さらに同指数の変化に注目すると、トルコ、インド、ポーランド、タイ、ハンガリー、ブラジルは、2013年から2021年にかけて、同指数が0.17から0.41という比較的大きな規模で低下していることがわかります。

「非民主化の進行」が、自国通貨への不安拡大や、他国における債務膨張懸念を強め、それらをきっかけに金(ゴールド)の保有高を増やしている可能性があります(新たに保有高を増加させている、というよりも「金(ゴールド)に回帰している」という印象が強い)。

「非民主化の進行」が、一定の金(ゴールド)の需要増加に寄与していると考えられます。実際、非民主的な国々の数は、どのように変化しているのでしょうか。次回以降、述べます。

図:金(ゴールド)保有増加上位と自由民主主義指数
図:金(ゴールド)保有増加上位と自由民主主義指数

出所:WGCおよびV-Dem研究所のデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。