[Vol.1422] 「グローバル化」の長期視点の変化に注目

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反落。米主要株価指数の反落などで。77.92ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,845.75ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。23年05月限は12,530元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。23年04月限は562.3元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで919.3ドル(前日比6.9ドル縮小)、円建てで3,901円(前日比9円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(2月15日 18時38分頃 6番限)
7,865円/g
白金 3,964円/g
ゴム 218.7円/kg
とうもろこし 43,910円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 8月5日午前10時35分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 日足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「『グローバル化』の長期視点の変化に注目」
前回は、「『ここからの長期投資』の前提を確認」として、自由民主主義指数0.4以下および0.6以上の国の数を、確認しました。

今回は、「『グローバル化』の長期視点の変化に注目」として、1990年以降のグローバル化の変遷について、筆者の考えを述べます。

前回、V-Dem研究所のデータを参照しながら、世界は今、「グローバル化混沌」の状態にあると、述べました。ここからは「グローバル化」の変遷の詳細を確認します。

以下の図は、筆者が考える、1990年以降のグローバル化の変遷です。先述の通り、冷戦終結後、世界は急速にグローバル化しましたが、2010年の頃に行き詰まり、2020年以降、混沌としています。

行き詰まりの一因に挙げられるのが、西側諸国が提唱しはじめた「環境・人権」問題解決に向けた動きです。

これらのテーマは、人類共通の目的と称し、経済成長を誘引することを目的にして提唱されたわけですが、「環境」を提唱すればするほど「産油国・産ガス国」からの反発が、「人権」を提唱すればするほど「独裁国家」からの反発が強まりました。

また、これらの新しいテーマが「西側のビジネスチャンス」という意味を含んでいたことが、非西側諸国(産油国・産ガス国、独裁国家)の不満を大きくした可能性があります。

そして、2020年に新型コロナがパンデミック化し、2022年にウクライナ危機が勃発しました。こうした混乱に乗じて影響力を高めようと画策する国が現れたり、混乱がきっかけで生じた資源価格の高騰を謳歌(おうか)する国々が現れたりしました。

こうした過程を経て、特にウクライナ危機勃発後は、旧ソ連諸国(ベラルーシ、カザフスタンなど)、ロシアとアジアで隣接する国々(中国・北朝鮮)、産油国(サウジ、イランなど)、南米・アフリカの資源国(ボリビア、南アフリカなど)の、西側諸国への反発心が集合しはじめたと考えられます。

このことを裏付けるように、2022年11月に行われた国連決議「ロシアに対してウクライナ侵攻による損害の賠償を要求」で、193カ国中99カ国が、反対・棄権・未投票などの行動をとり、ロシアを否定しませんでした(賛成94よりも多い)。

ロシアを否定するはずの国際連合決議で、世界の半分強の国々が、反対・未投票・棄権などの、ロシアを積極的に否定しない姿勢を示しました。

「グローバル化」の変遷を振り返ると、グローバル化「開始」前後(1990年前後)の市場は「単純」「自分」「現実」「経済」などのキーワードで分析が可能でした。しかし、グローバル化が「行き詰まる」と、「複雑」「他人」「偶像」「社会」などのキーワードを用いないと分析ができなくなりました。2020年以降の「混沌」期は、「行き詰まり」の度が増したイメージです。

図:1990年以降のグローバル化の変遷(筆者イメージ)
図:1990年以降のグローバル化の変遷(筆者イメージ)

出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。