米覇権・ドル基軸通貨崩壊のターニングポイント

著者:菊川 弘之
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 習近平が全人代で国家主席に選出された3月10日、2016年から断交してきたイランとサウジアラビアが、外交関係を正常化することで合意した。イランのシャムハニ最高安全保障委員会事務局長とサウジのアイバン国家安全保障顧問は3月6日から10日まで北京に滞在し、中国外交のトップである王毅・中共中央政治局委員と会談を行い、両国の代表が、北京で外交再開を盛り込んだ共同声明に署名した。

 両国ともイスラム教国ではあるが、シーア派(イラン)とスンニ派(サウジ)に分かれて長く争い、特に2016年1月2日にサウジでイスラム教シーア派聖職者を処刑したことから、イランで激しい反サウジデモが展開され、以来、中東の近隣諸国を巻き込む形で争いが絶えなかった。イエメン内戦では、同国の暫定政権を支援するサウジ主導のアラブ有志連合とイランが後ろ盾のイスラム教シーア派武装勢力フーシが争い、サウジとイランの代理戦争の様相を呈した。火薬庫と言われたこの地域において、中国が両国を和解させた意義は大きく、中東周辺諸国はみな礼賛の意を表した。中東で米国の影響力が低下するなか、対立してきた地域大国の仲介を成功させた中国が次の覇権国として存在感が大きくなることは確実だ。

 中国共産党傘下の中央テレビ局CCTVは「イランとサウジの和解に関して最も重要な文字は3文字ある。それは【在北京】というという3文字だ。西側諸国、特にアメリカには絶対に成し得なかったことを【北京】がやってのけたということだ。

 西側は世界各地で戦争を引き起こし、火に油を注ぎ続け、国際社会を分断させることに余念がないが、中国はその逆の方向に動いている。人類運命共同体を軸に、世界に和睦と平和をもたらそうとしているのは【中国だ】ということが、これで明らかになっただろう」と解説している。

NY金(4月限)とドル円(日足)
 

このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

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