[Vol.1470] 「向こう」を見ないSDGsの功罪

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。米主要株価指数の反発などで。77.23ドル/バレル近辺で推移。

金反発。米10年債利回りの反落などで。2,006.50ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。23年09月限は11,880元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。23年06月限は551.2元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで899.7ドル(前日比0.45ドル縮小)、円建てで3,956円(新甫限月のため前日比なし)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(4月26日 9時55分頃 6番限)
8,572円/g
白金 4,616円/g
ゴム 210.3円/kg
とうもろこし 42,490円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 8月5日午前10時35分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 日足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「『向こう』を見ないSDGsの功罪」
前回は、「しないはずの『置き去り』に非西側は失望」として、「非西側」の産油国が躍起になって減産をする理由について、筆者の考えを書きました。

今回は、「『向こう』を見ないSDGsの功罪」として、望ましいSDGsとそうでないSDGsについて、筆者の考えを書きます。

日本国内に「自治会」などの地域コミュニティーは30万あるといわれていますが(総務省の資料より)、今年度、筆者は自宅が属する自治会の班長になったため、先日初めて総会に参加しました。配布された資料に目を通している最中、ある箇所でしばらく考え込みました。「自治会活動とSDGs」です。

誰もが住みやすい、住み続けたいと思える都市を目指し、住民相互の連絡・連携、環境の美化、親睦交流活動、生活安全、福祉活動を充実させることが、当該自治会におけるSDGs、だと書かれていました。

「持続」することに偏っている感が否めない、自治会に加盟していない(会費を納入していない)地域住民にこのメッセージが届いておらず「置き去り」を黙認している、自治会の及ぶ範囲が関わっている人や地域だけ(それ以外は対象外)など、SDGsとは言い難い内容ではないか、と感じました。

もし当該自治会が述べるSDGsが、自治会に加盟していない人や、自治会以外の人・地域のことを考慮せず、自分たちだけが「持続」できればよい、と考えているのであれば、非常に身勝手なSDGsです(そもそもそれはSDGsとは言えない)。

世の中にはこうした「自分たちだけ型」のSDGsのほか、「部分だけ型」のSDGsもあります。「当社はSDGsのこの目標とこの目標を守れるように頑張っています」、のようなケースです。「できることをやる」は、裏を返せば「できないことはやらない」になってしまう危険をはらんでいます。

「自分たちだけ型」「部分だけ型」の共通点は、全体を網羅できていないことです。鳥の目で物事を見る「俯瞰(ふかん)」が足りていないのです。非西側を置き去りにしてきた西側のSDGsと同じです。「自分以外を含めた全体」を認識することで初めて、「誰も置き去りにしない(No one will be left behind)」を実現できるのです。

「置き去りにされた失望や怒りに似た感情」が膨れ上がるとどうなるでしょうか。こうした感情がいったん膨れ上がると、話し合いで解決することは困難です。仲裁できる人がいない場合、問題は長期化してしまいます(現在の西側と非西側のように)。

SDGs順守をうたうのであれば、「俯瞰」は必須です。「置き去り」を発生させて別の問題を噴出させることがないためにも、この考え方は欠かせません。

図:さまざまなSDGs
図:さまざまなSDGs

出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。