[Vol.1471] ウクライナ危機は「後戻り防止装置」

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。74.51ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。2,007.90ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。23年09月限は11,740元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。23年06月限は526.1元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで894.25ドル(前日比4.25ドル拡大)、円建てで3,950円(前日比8円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(4月27日 17時46分頃 6番限)
8,576円/g
白金 4,626円/g
ゴム 208.7円/kg
とうもろこし 41,020円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 8月5日午前10時35分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 日足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「ウクライナ危機は『後戻り防止装置』」
前回は、「『向こう』を見ないSDGsの功罪」として、望ましいSDGsとそうでないSDGsについて、筆者の考えを書きました。

今回は、「ウクライナ危機は『後戻り防止装置』」として、WTI原油先物のこれまでの推移を振り返ります。

過去から続く「西側」と「非西側」の間にある「分断」は、ウクライナ危機の遠因だったと筆者は考えています。SDGs(2015年採択)を合わせて考えると、SDGsで「置き去り」発生→西側と非西側の「分断」深化→ウクライナ危機勃発(2022年)、となります。

そしてこのウクライナ危機が今、「分断」を固定化する役割を担っていると考えられます。さながら、分断を固定化する前の状態に戻さない「後戻り防止装置」です(ここまでの覚悟をもって、ロシアは軍事侵攻を始めた可能性がある)。

危機があることで、西側も非西側も制裁の応酬(利上げvs減産など)を繰り返し、「分断」を解消する糸口が見えません(西側もまた、「分断」深化に加担している)。

また、危機勃発を機に生じた西側の混乱に乗じ、ここぞとばかりに影響力を示し始めた非西側の国が複数あります。西側に対して食料、エネルギーなどの重要品目や資金を出し渋ることで、高インフレをもたらして西側をさらに混乱させたり、西側の銀行を連鎖破綻に追い込む一因を作ったりしています。

非西側にとって、危機継続は一定のメリットがあるのです(もちろん相当の代償をはらうことになるのだが)。このため、危機継続→分断深化続く→減産終わらない→原油高継続→西側の高インフレ続く、という構図が続く可能性があります。

起点がSDGs起因の「置き去り」であったり、固定化された「分断」であったりする今のインフレは、非常に根が深いと言わざるを得ません。筋違いな対症療法(西側の利上げ)でなんとかできる代物ではないと、筆者は感じています。

図:NY原油先物(日足 期近 終値) 単位:ドル/バレル
図:NY原油先物(日足 期近 終値)

出所:Investing.comのデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。