米債務上限問題、基本合意を受けたドル円見通し

著者:菊川 弘之
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 米債務上限問題を巡り、バイデン大統領と共和党のマッカーシー下院議長との協議が5月27日に基本合意した。合意内容は、歳出削減などを条件に2025年1月1日まで上限の効力を停止するというものだ。

 合意案は、2024会計年度(23年10月~24年9月)について社会保障を除く「裁量的支出」の国防費を除いた金額を23年度と、ほぼ同じ水準にし、25年度に1%の増加を認める。

 焦点だった低所得層向けの食糧支援は、支給の条件として就労を求める対象年齢を現行の49歳から54歳に引き上げ、共和が求めていた厳格化を認めた形になる。

 一方、共和党が求めていたクリーンエネルギー支援策の削減を回避した半面、化石燃料を含めたエネルギー開発について環境への影響を審査する期間の短縮に応じた。

 今後の焦点は、31日に予定されている議会での審議に移る。承認されれば、少なくとも2024年11月の次期大統領選までは市場で懸念されていた米国債の債務不履行(デフォルト)は回避される。ただし、大幅な歳出削減を求めてきた共和党の保守強硬派が、法案にすんなり賛成するかは不明で、民主党内にも、歳出削減を受け入れることに根強い不満がある。

 共和の下院での優位は僅差で、一部の強硬派の意見を取り入れなければ法案を通すことができない。両者が時間内に折り合えるかどうかは予断を許さない状況が続いている。

 基本合意を受けて株高・ドル高で反応しているが、債務上限の引き上げが成功しても、政府の手元資金を確保するため短期債の大量発行が予想され、市中に出回る資金を吸い上げることになる点に注意したい。
 
ドル円(日足)
ドル円(日足)
 

このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

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