[Vol.1501] 材料難ではなく「強弱拮抗」

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。67.33ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,974.10ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。23年09月限は11,905元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。23年07月限は507.5元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで974.25ドル(前日比0.90ドル拡大)、円建てで4,382円(前日比25円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(6月13日 14時14分時点 6番限)
8,779円/g
白金 4,397円/g
ゴム 210.3円/kg
とうもろこし 40,880円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 8月5日午前10時35分時点)

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス
NY金先物(期近) 日足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「材料難ではなく『強弱拮抗』」
前回は、「フタをされた金(ゴールド)相場」として、国内外の金(ゴールド)先物相場の推移を確認しました。

今回は、「材料難ではなく『強弱拮抗』」として、最近のドル建て金(ゴールド)市場を取り巻く上昇・下落圧力(筆者イメージ)を確認します。

前回、足元の円建て金(ゴールド)相場は「フタ」がのっているかのように、上値を抑えられている、ドル建て相場はある基準を中心に浮き沈みをしているだけだと述べました。上昇圧力と下落圧力が拮抗(きっこう。ほぼ等しい力で張り合う)していることが、さえない値動きになっている理由であると、筆者はみています。

さえないのは、材料がなく、どちらに動いたらよいかわからないためではなく、上からも下からも圧力がかかっているためだと、言えます。現に、さえない値動きであっても、円建て先物市場の日々の出来高の水準は、平時とほとんど変わりません(材料がないのであれば、市場参加者の意欲がわかず、出来高は増えない)。

ではどのようなテーマが、上昇圧力と下落圧力をかけているのでしょうか。上昇圧力をかけていると考えられるテーマは、「有事ムード」、「中央銀行」、「見えないリスク」の三つ(時間軸は異なる)、下落圧力をかけていると考えられるテーマは「代替資産」と「代替通貨」の二つです(ともに短中期)。

「有事ムード(不安心理)」起因の上昇圧力は、ウクライナ情勢の激化(同国国内の主要ダムが破壊されたことや、ゼレンスキー大統領が反転攻勢に出る旨を指示したことなど)や、欧米で主要銀行の連鎖不安が根強く残っていること(短中期)、「中央銀行」起因の上昇圧力は、非西側(特に中国やロシア、トルコなど)の中央銀行が金(ゴールド)の保有高を増やし続けていると考えられること(短中期)によって発生していると、考えられます。

「見えないリスク」起因の上昇圧力は、リーマンショック後に芽吹き、ウクライナ危機が勃発したことで修復が困難になった西側と非西側の分断が、長期視点の意に介しにくい不安の火種をくすぶらせていることによって発生していると、考えられます(超長期)。

「代替資産(株の代わり)」起因の下落圧力は、主要国の株価指数が高水準を維持していること、「代替通貨(ドルの代わり)」起因の下落圧力は、FRB(米国の中央銀行にあたる米連邦準備制度理事会)の要人らが、利上げを当面続けることを示唆し、ドルが高止まりしていることによって発生していると、考えられます(ともに短中期)。

複数のテーマ起因の、複数の上昇圧力と下落圧力が拮抗していることが、国内外の金(ゴールド)相場を「小動き」「さえない」状態にしていると、考えられます。

図:最近のドル建て金(ゴールド)市場を取り巻く上昇・下落圧力(筆者イメージ)
図:最近のドル建て金(ゴールド)市場を取り巻く上昇・下落圧力(筆者イメージ)

出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。