[Vol.1503] 「代替通貨」起因の圧力の方向転換

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。68.75ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,944.75ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。23年09月限は12,155元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。23年08月限は517.6元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで974.9ドル(前日比14.00ドル縮小)、円建てで4,432円(前日比7円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(6月15日 17時13分時点 6番限)
8,764円/g
白金 4,332円/g
ゴム 211.0円/kg
とうもろこし 41,380円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 8月5日午前10時35分時点)

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス
NY金先物(期近) 日足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「『代替通貨』起因の圧力の方向転換」
前回は、「年後半に材料の構造的変化が起きる?」として、最近の金(ゴールド)市場を取り巻く七つのテーマについて、述べました。

今回は、「『代替通貨』起因の圧力の方向転換」として、市場が見込む米国の金利水準見通しの変化について、述べます。

CME(シカゴマーカンタイル取引所)が提供するFed Watch ツールは、現在の金利水準(5.00~5.25)と将来のFOMC(米連邦公開市場委員会)ごとの金利水準(見通し)の差が、来年(2024年)序盤から緩和(利上げ打ち止めや利下げ)方向に拡大することを示唆しています(6月9日時点)。

CPI(消費者物価指数)や雇用統計など、米国の金融政策に影響し得る同国の経済指標の内容を注視し続けることが前提ではあるものの、市場は2024年の米国の金融政策は、大きく「緩和」方向に向かうことを見込んでいます。

仮に米国の金融政策が緩和方向に向かえば、2022年の夏前から終盤にかけて見られた「引き締め(利上げ)→ドル高→ドル建て金(ゴールド)安」の流れと逆のこと、つまり「緩和(利上げ打ち止め・利下げ)→ドル安→ドル建て金(ゴールド)高」という流れが発生する可能性が生じます。

今のところ、FRBの要人たちの多くは、「まだインフレ退治(利上げ)を続けることが必要」という趣旨の発言を繰り返しています。しかし、この利上げへの温度感が低下すれば、2022年夏前から終盤で起きたことの逆回転(ドル安・ドル建て金高)が起き得ます。

この逆回転の際に生じるのが、「代替通貨(ドルの代わり)」起因の上昇圧力です。これまで「代替通貨」は多くの場面で金(ゴールド)相場に下落圧力をかけてきましたが、FRBの方針転換を機に、「代替通貨」起因の圧力は下落から上昇に転換する可能性があります。

図:市場が見込む米国の金利水準見通しの変化(現在と比較)
図:市場が見込む米国の金利水準見通しの変化(現在と比較)

出所:CME「Fed Watchツール」のデータより筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。