米覇権・基軸通貨ドルの揺らぎが始まりつつある

著者:菊川 弘之
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 米国の同盟国である日本での報道は小さかったが、7月4日、上海協力機構はインドを議長国として首脳会談を開催し、米国が敵対視するイランの正式加盟が決議された。米国の覇権、ドル基軸通貨体制を揺るがす流れが、一段と強まっている格好だ。

 2001年に、「中国、ロシア、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタン」の6ヵ国により設立された上海協力機構は、2017年にインドとパキスタンが正式に加盟し、今般のイラン正式加盟により、正式加盟国は9ヵ国になった。ベラルーシが正式加盟手続き中で、そのほか多くのオブザーバー国や対話パートナー国、あるいは客員参加国・組織などが控え、世界の全人口の約半分を占めるに至っている。

 サウジやアラブ首長国連邦など中東産油国が上海協力機構の「対話パートナー」となっている点も重要だ。ニクソンショック以降、金本位制を放棄した米ドルが基軸通貨の地位を維持したのは、1974年にアメリカがサウジの安全保障と引き換えに石油を米ドルで購入させる「ペテロダラー」体制を創ったからだ。

 しかし、バイデン政権になって以降、人権問題などで強い警告を受けたサウジは「自国の利益を犠牲にしてアメリカに奉仕する気はない」とする姿勢を強め、原油取引を人民元や、BRICS通貨などでの決済に移行しようとしている。

 中国・ロシアが「OPECプラス」を味方に付けたというのは、「脱米ドル」を加速させ、米覇権を揺るがす意味合いがある。


 

このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

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