米覇権・基軸通貨ドルの揺らぎが始まりつつある

著者:菊川 弘之
ブックマーク
 今や中国は南米における経済交易を大幅に拡大し、アメリカを抜いて南米大陸最大の貿易相手国となっている。ウクライナ戦争による対露制裁に加わっていない国は全人類の85%にのぼる。

 7月11日から始まる北大西洋条約機構(NATO)首脳会議だが、東京事務所の開設について、マクロン大統領が反対の意向を伝えており、スナク英首相は8日、米政府がウクライナにクラスター弾を供与する方針を決めたことについて「英国はクラスター弾の生産や使用を禁じる条約の締結国だ」と述べ、反対する姿勢を示している。

 クラスター爆弾は、ウクライナが供与を求めていること以上に、米国の通常の弾薬在庫が底をつき、その生産が間に合わないことに加え、これまで提供してきた旧式武器在庫と同様、冷戦時代から備えていた大量のクラスター爆弾在庫の処分をしたい意向。停戦を進める中国と武器供与を続ける米国の、どちらに正義があるか、G7内にも米国に諸手を挙げて賛成しない国が出てきた。NATOの東京事務所開設は、台湾有事に日本が巻き込まれる可能性を高めるものだろう。来年の台湾大統領選挙や、米大統領選挙に向けて、「各国の民主化を支援する」と言うことが建前のNED(全米民主主義基金)が、親米的ではない国々の政権を転覆させるため、その国の市民活動を支援する形で「民主化デモ」を煽る動きは強まりそうだ。中国もこれに対抗するため、7月から「改正反スパイ法」が施行された。7月3日には半導体素材の輸出規制(8/1からガリウム・ゲルマニウム)も発表されている。

 チキンレースの様相で米中対立が高まっていく中、11月に開催予定のAPECで米中首脳会談が実現するか否か妥協点が図れるか否かが注目だ。


 

このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

https://www.nstrading.co.jp/

http://market-samurai.livedoor.biz/