[Vol.1525] 「中央銀行」と金(ゴールド)市場の関係

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。米主要株価指数の反発などで。74.35ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,964.05ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。23年09月限は12,135元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。23年09月限は574.6元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで970.9ドル(前日比2.20ドル拡大)、円建てで4,394円(前日比22円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(7月18日 12時45分時点 6番限)
8,732円/g
白金 4,338円/g
ゴム 202.6円/kg
とうもろこし 40,000円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 8月5日午前10時35分時点)

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス
NY金先物(期近) 日足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「『中央銀行』と金(ゴールド)市場の関係」
前回は、「インフレ長期化の懸念あり」として、主要原油輸出国の財政収支が均衡する時の原油価格について、述べました。

今回は、「『中央銀行』と金(ゴールド)市場の関係」として、主要原油輸出国の財政収支が均衡する時の原油価格について、述べました。

中央銀行(Central bank)は、通貨を発行したり、雇用と物価を調節するために金融政策を検討・決定したり、事態が急変した時のために外貨準備高を保有したりする、公的な金融機関です。「銀行の銀行」とも呼ばれます。例えば、日本の日本銀行、米国のFRB(連邦準備制度理事会)、EU(欧州連合)のECB(欧州中央銀行)が、その役割を担っています。

各国の中央銀行の多くが外貨準備高の一部として金(ゴールド)を保有しています。中央銀行が2023年第一四半期に積み上げた量(差引合計)は、金(ゴールド)の全需要の20%強に達しました(WGC(ワールド・ゴールド・カウンシル)のデータより)。このことは、中央銀行の動向が金(ゴールド)市場に大きな影響を与える存在であることを示しています。

下のグラフのとおり、ウクライナで危機が勃発したり、米国で急速な利上げが行われたりした2022年の積上げ量(差引合計)は、統計史上最大となりました。リーマンショックが発生した2008年以降、大きな規模の積上げが続いていた中での出来事でした。

金(ゴールド)市場に大きな影響を与える中央銀行の動向は、筆者が提唱する七つのテーマの一つです(時間軸は中長期にあたる)。1970年代後半にさけばれた「有事の金(ゴールド)買い」は、今も健在ではあるものの、社会が複雑化したことを受け、複数の中の一つになっています(同様に、中央銀行も複数の中の一つ)。

今どきの金(ゴールド)市場は、たった一つのテーマだけで説明できる、軽くて簡単な代物(しろもの)ではありません。七つ(円建ての場合は八つ)のテーマがもたらす上昇圧力と下落圧力、それぞれを同時に見渡す(俯瞰(ふかん)する)必要があります。「中央銀行」は、その一翼を担う、非常に重要なテーマなのです。

今後の数回で、世界的な金(ゴールド)の調査機関であるWGCが毎年行っている「中央銀行調査」の結果(データ)をもとに、「中央銀行のリアル」に迫ります。中央銀行らの関心事は何か、何を根拠に金(ゴールド)を積上げているのか、今後、外貨準備高をどのように構築していこうと考えているのか、などをうかがい知ることができる、大変興味深いデータです。筆者の考察を交えながら、書き進めます。

図:中央銀行による金(ゴールド)積上げ量(差引合計)の推移 単位:トン
図:中央銀行による金(ゴールド)積上げ量(差引合計)の推移

出所:WGC(ワールド・ゴールド・カウンシル)の資料をもとに筆者推計

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。