[Vol.1540] インフレ鈍化で利上げ継続動機薄まる

著者:吉田 哲
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原油反落。米主要株価指数の反落などで。80.88ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,968.15ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。24年01月限は12,890元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。23年09月限は621.4元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1050.85ドル(前日比7.75ドル拡大)、円建てで4,697円(前日比12円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(8月8日 18時02分時点 6番限)
8,892円/g
白金 4,195円/g
ゴム 196.1円/kg
とうもろこし 39,980円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 8月5日午前10時35分時点)

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス
NY金先物(期近) 日足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「インフレ鈍化で利上げ継続動機薄まる」
前回は、「足元、材料の頂点は『米国の金融政策』」として、最近の市場の全体像(株・為替・コモディティなど全般)について、述べました。

今回は、「インフレ鈍化で利上げ継続動機薄まる」として、米政策金利(FFレート)と米消費者物価指数(CPI)について、述べます。

前回述べたとおり、「米国の金融政策」が材料の頂点にあり、それが利上げの温度感低下という緩和方向に転じつつある状態は、しばらく続く可能性があると、筆者は考えています。それは今後も、金(ゴールド)を含む主要銘柄の動向に、「米国の金融政策」が影響を与え続けることを意味します(細かい上下はあるが、前回の上昇(1)は継続すると考える)。

そもそも「米国の金融政策」において、利上げの温度感が低下する気配が出始めたのは、インフレ退治のために行っていた利上げの動機が薄まってきていたためでした。以下のグラフのとおり、米国国内の主要なインフレ指標の一つ、「消費者物価指数(CPI)」は、この1年間で急低下しています(青線)。

原油相場が短期視点でピークから下落したことなどが、CPI低下の一因とみられます(原油相場は、長期視点でまだまだ高水準であることに留意が必要)。

また、昨年行った急激な利上げを経て、足元の金利がリーマンショック直前と同じ高水準に達したことも、利上げ温度感低下の一因に挙げられます。米国国内では、金利が上昇したため自動車や住宅のローンを利用する人が減少しているとの報告があります。これ以上の利上げは、さらなる景気鈍化を発生させかねません。

インフレが短期的に落ち着いたことや、さらなる景気鈍化を発生させかねないことなどが、利上げの温度感が低下した背景にあると考えられます。

今後、原油相場が急騰しない(緩やかな上昇は影響を吸収しやすいため再利上げの動機になりにくい)、米国国内の個人消費に回復の兆しが見込みにくい、などの条件が変わらなければ、利上げを継続する動機がさらに低下し、「米国の金融政策」起因の金(ゴールド)高が続く可能性があります。

図:米政策金利(FFレート)と米消費者物価指数(CPI)
図:米政策金利(FFレート)と米消費者物価指数(CPI)

出所:米労働省およびセントルイス連銀のデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。