[Vol.1562] 超長期的には均衡点変化の兆しが見えた

著者:吉田 哲
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原油反落。米主要株価指数の反落などで。86.67ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,948.05ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。24年01月限は14,255元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。23年10月限は690.6元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1041.35ドル(前日比8.45ドル拡大)、円建てで4,850円(前日比28円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(9月8日 17時35分時点 6番限)
9,108円/g
白金 4,258円/g
ゴム 231.8円/kg
とうもろこし 39,060円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 22年8月5日午前10時35分時点)

●シカゴ小麦先物(期近) 日足  単位:ドル/ブッシェル
シカゴ小麦先物(期近) 日足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「超長期的には均衡点変化の兆しが見えた」
前回は、「代替先でも供給増加は望みにくい」として、ロシアとウクライナの主要な小麦輸出先について、書きました。

今回は、「超長期的には均衡点変化の兆しが見えた」として、小麦の生産・消費量、収穫面積(世界全体)について、書きます。

以下のとおり、世界全体で見た場合、収穫面積はほぼ横ばいです。それにもかかわらず、生産量が増えているのは、単収(一定面積あたりの生産量)が増えているためです。収穫面積を増やすことが容易でないことは、この半世紀以上、同面積が横ばいで推移していることから伺えますが、単収は技術革新で増やすことができます。

その単収は、この60年間で約3.5倍に増加しています。すさまじい技術革新が起きたと感じます。人類は、今後も単収を増加させることは、できるのでしょうか。もし実現できれば、仮にウクライナ危機が長期化し、同危機起因の供給懸念が続いたとしても、世界的な需給ひっ迫は回避できるかもしれません。

しかし、すでに単収を約3.5倍にした技術革新を実現してしまったことを考えると、近い将来、単収の伸びは、限界に達する可能性があります。

面積や単収の話だけでなく、近年目立っている異常気象(異常な高温、低温、多雨など)で生産量が減少することもあるでしょう、また、それがきっかけでバッタが大量発生し、食物が食いつぶされるケースもあるでしょう(2020年に北アフリカで発生)。

西側での需給ひっ迫懸念(ウクライナ危機長期化起因)、収穫面積の増加の鈍化、異常気象による生産減少懸念、新興国の人口増加および食文化の変化による需要増、など超長期視点でいくつもの小麦価格を支える材料が存在することを考えれば、現在の水準が長期視点で定着する(均衡点の変化(パラダイムシフト)が起きる)可能性はゼロではないと、筆者は考えています。

日々の細かい価格変動と、超長期視点の価格変動の両方を意識することが、小麦相場を分析する上で欠かせないと考えます。

図:小麦の生産・消費量、収穫面積(世界全体)
図:小麦の生産・消費量、収穫面積(世界全体)

出所:USDA(米農務省)のデータをもとに筆者作成

 

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このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。