現在は“リグ減・米原油生産量増”があたりまえ

著者:吉田 哲
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原油(WTI先物)反発。主要株価指数の反発などで。54.05ドル/バレル近辺で推移。

金反落。米10年債利回りの反発などで。1,491.65ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。20年01月限は11,765元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。19年12月限は447.3元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで603.15ドル(前日比2.15ドル縮小)、円建てで2,088円(前日比2円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

東京市場は以下のとおり。(10月18日 17時37分頃 先限)
 5,187円/g 白金 3,099円/g 原油 37,370円/kl
ゴム 166.9円/kg とうもろこし 24,360円/t

●東京原油 1時間足 (単位:円/キロリットル)
東京原油 1時間足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードCX」より

●本日のグラフ「現在は“リグ減・米原油生産量増”があたりまえ」

前回は「米シェール日量1000万バレルをめざす!?」として、米シェール主要地区の原油生産量の現状と、今後の見通しについて書きました。

今回は前回に関連し「現在は“リグ減・米原油生産量増”があたりまえ」として、米シェール主要地区の稼働リグ数と掘削済・仕上げ済井戸(DUC)について書きます。

稼働リグ数が米国の原油生産量の先行指標、という認識は、「現在は」あてはまりません。

2019年1月ごろから、米国における稼働リグ数減少・原油生産量増加の傾向が鮮明になりました。

稼働リグ数が減少しているのになぜ、米国の原油生産量が増加しているのか? 稼働リグ数と米国の原油生産量は連動しなくなったのか?と疑問に感じる方もいると思いますが、「現在の」このような動向は、全く不自然ではありません。

これまで積み上げてきた、掘削済・未仕上げ抗井(DUC)を取り崩して生産が行われているためです。

DUCはその名前のとおり“掘削済”であるため、DUCとなった時点で掘削(開発段階の前工程)に使われるリグが稼働する工程はすでに終わっています。

このため、稼働リグ数がいくら減少しても(前工程がいくら行われなくなっても)、これまでに積み上げられたDUCの取り崩しが行われている限り、生産量が減少することはありません。

DUCの取り崩しとは、積み上げられたDUCに、原油生産を開始することを前提に行われる“仕上げ”(開発段階の後工程)を行うことです。

リグは原油の生産施設ではなく、単なる穴掘り機であるという、“リグとは何か?”について理解が深まれば、リグ数減少と生産量増加の背景がわかります。

図:米シェール主要地区の掘削済・未仕上げ抗井(左軸)と稼働リグ数(右軸)
単位:基
米シェール主要地区の掘削済・未仕上げ抗井と稼働リグ数

出所:EIA(米エネルギー省)のデータをもとに筆者作成

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。