[Vol.1589] ウクライナ戦争勃発が遠因

著者:吉田 哲
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原油反落。米主要株価指数の反落などで。87.06ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,958.85ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。24年01月限は14,690元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。23年12月限は683.6元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1071.55ドル(前日比5.35ドル縮小)、円建てで5,136円(前日比145円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(10月19日 14時43分時点 6番限)
9,369円/g
白金 4,233円/g
ゴム 269.0円/kg
とうもろこし 40,650円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 22年8月5日午前10時35分時点)

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス
NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「ウクライナ戦争勃発が遠因」
前回は、「米・英が与えたはかり知れない影響」として、イスラエル/パレスチナのユダヤ人の数と米国が中東関連の議案で拒否権を発動した件数について述べました。

今回は、「ウクライナ戦争勃発が遠因」として、イスラエルを取り巻く各種環境(2023年10月中旬時点)ついて述べます。

足元、ガザ地区を実効支配している「ハマス」(イランの支援を得てイスラエル側に対する武力行為を行っている。そのほか、民衆の支持獲得のためもあり、同地区で慈善活動や教育支援も行っている)は、もう一つのパレスチナ自治区であるヨルダン川西岸でイスラエル側と和平交渉を目指す「ファタハ」と一線を画すようになっています。

また近年、UAE(アラブ首長国連邦)やバーレーンなどのアラブ諸国が、ハマスやファタハを介さずにイスラエル側と国交を結んだほか、足元、アラブの盟主とされるサウジアラビアが国交正常化を模索したりしているとされています。

支援をしていたはずのアラブ諸国がパレスチナを置き去りにしつつ、イスラエル側に接近する動きが目立ち始めています。

しかしハマスは、イランの支援を受けています。イランは、非西側産油国の集団「OPECプラス」のほか、先日発足が決定した非西側主要国の集団「BRICSプラス」の一員でもあります。そしてそのイランの支援を受けるハマスもまた非西側寄りだと言えます。

ファタハと分裂したり、西側寄りのアラブ諸国がパレスチナを飛び越えてユダヤ人側と国交を正常化したりしたことで、ハマスはある意味「しがらみなく」イランの支援を受けられる(イランは支援できる)ようになったとも言えます。

一方、イスラエル側はアメリカと緊密に連携しているため、比較的西側寄りだと言えます。西側・非西側間の世界規模の分断は、ウクライナ危機勃発以降、際立っているわけですが、こうした分断もまた、イスラエル側とハマスの戦争の一因だと言えると、筆者は考えています。

ウクライナ危機勃発以降、際立っている西側・非西側間の分断が改善される気配は皆無です。このため、今回のハマスとイスラエルの戦争も長引く可能性があります。

このことは、金(ゴールド)相場にかかる有事起因の上昇圧力や、そして原油相場に供給減少懸念起因の上昇圧力が継続する可能性があることを意味していると言えるでしょう。(別文脈の下落要因があれば下落する場合があることに注意が必要)。

図:イスラエルを取り巻く各種環境(2023年10月中旬時点)
図:イスラエルを取り巻く各種環境(2023年10月中旬時点)

出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。