[Vol.1602] 「二重ショック」で食料価格高も

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。77.38ドル/バレル近辺で推移。

金反発。米10年債利回りの反落などで。1,974.15ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。24年01月限は14,170元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。23年12月限は607.9元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1081.1ドル(前日比5.60ドル拡大)、円建てで5,266円(前日比27円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(11月8日 17時18分時点 6番限)
9,531円/g
白金 4,265円/g
ゴム 258.8円/kg
とうもろこし 39,350円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 22年8月5日午前10時35分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「『二重ショック』で食料価格高も」
前回は、「原油価格は史上最高値更新も」として、原油(ブレント)価格の推移と世界銀行の戦争激化時のシナリオを、確認しました。

今回は、「『二重ショック』で食料価格高も」として、原油高が食料供給者(関連企業・農家など)にもたらす影響を、確認します。

世界銀行のエコノミストは前回触れた戦争激化時の見通しについて、「中東での紛争がエスカレートすれば、世界経済は二重ショック(a dual energy shock)に直面するだろう」と述べています。

同見通しは、中東情勢が悪化した場合、原油だけでなく天然ガスや石炭、さらには化学肥料の価格が上昇する可能性があるとしています。

中東における紛争がさらに激化すれば、紛争に直接悩まされている地域だけでなく、その周辺国、ひいては世界レベルでも、食料不安が目立つ可能性があるとしています。以下が、想定される経路(原油価格上昇→食料価格上昇・供給減懸念増)です。

食料の供給者(関連企業や農家など)は、絶えず原油価格の動向がもたらす影響を受けています(原油価格の動向は川上寄り、食料の供給者は川中付近)。原油価格が上昇すると、ガソリンや軽油などの輸送や機器の運転を支える燃料のコストが増えます。また、ビニールやプラスチックなどの原油由来の原材料コストが増えます。

その他、原油価格が上昇すると、連動する傾向があるLNG(液化天然ガス)価格が上昇して火力発電の燃料コストが上昇し、食品の供給に欠かせない電気代が上昇したり、化学肥料を製造するために欠かせない燃料のコストが上昇したりすることも、食料価格を押し上げる要因になり得ます。

原油価格が上昇して食料価格が上昇すれば、国や地域によっては食料の供給量が減少する場合があります。仮に原油相場が「未知の領域」に達するほど大暴騰する事態になれば、食品価格の大幅上昇や供給量の大幅減少などは避けられないかもしれません。

「二重ショック」は、燃料や発電コストが急増することでもたらされる直接的なショックと、食品価格が大幅に上昇したり供給量が大幅に減少したりしてもたらされる間接的なショックの同時発生(どちらも原油価格暴騰起因)を指しているといえるでしょう。

図:原油高が食料供給者(関連企業・農家など)にもたらす影響
図:原油高が食料供給者(関連企業・農家など)にもたらす影響

出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。