[Vol.1626] 24年は「供給懸念と需要回復の両立」

著者:吉田 哲
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原油反落。COP28での化石燃料からの転換合意などで。68.09ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,995.00ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。24年05月限は13,405元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。24年01月限は521.1元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1061.15ドル(前日比1.05ドル縮小)、円建てで4,966円(前日比33円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(12月13日 16時57分時点 6番限)
9,279円/g
白金 4,313円/g
ゴム 238.0円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 22年8月5日午前10時35分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「24年は『供給懸念と需要回復の両立』」
前回は、「再確認『原油市場を取り巻く環境』」として、原油市場を取り巻く環境を確認しました。

今回は、「24年は『供給懸念と需要回復の両立』」として、2023年に目立った動向とそれらの2024年の予想について述べます。

以下の図は、2023年で発生した(1)産油国の動向と(2)需要動向の目立った動きと、2024年にそれらがどうなりそうかを示しています。

(1)産油国の動向:2023年は中東情勢悪化とウクライナ情勢継続の二つが西側・非西側の分断を深化させ、非西側の産油国が態度を硬化させて減産を強化しました。西側・非西側の対立は長期化する可能性が高いため、2024年も減産という名の「出し渋り」が続く可能性があります。(原油相場への上昇圧力)

また、2023年もバイデン政権下の米国で石油開発が停滞しました(原油相場が高止まりしているにもかかわらず、米シェール主要地区の開発関連指数が伸び悩んだ)。こうした脱炭素のジレンマが、2024年も続く可能性があります(原油相場への上昇圧力)。

ただ、米大統領選挙(2024年11月)で石油業界寄りの人物が勝利した場合、環境が変化する可能性があります。石油消費が推奨された場合は原油相場に上昇圧力がかかったり、石油開発が進んだ場合は下落圧力がかかったりすると考えられます。

米国の石油開発は、2024年、大統領選挙の選挙戦および結果によって、上昇要因にも下落要因にもなり得ると考えます。(通年では下落が優勢と考える)

(2)需要動向:2023年は欧米の金融引締めが一巡する兆しが生じました。昨年から今年の年央にかけてピークをつけた各種物価関連指標が低下し始めたためです。

これにより市場では、2024年は金利水準の引き上げが終わり(利上げ打ち止め)、引き下げが始まる(利下げ開始)予測が出てきています。

欧米の中央銀行がこれまでの引締めから緩和的な姿勢に転換することで、個人や企業が資金を融通しやすくなり、景気回復期待が浮上します(原油相場への上昇圧力)。また、ドル安が目立つようになり、ドル建てのコモディティ銘柄全般に上昇圧力がかかりやすくなります(原油相場などへの上昇圧力)。

また、2023年も中国の景気減速懸念は払しょくできないままでしたが、2024年もこうした状況が継続すると考えられます。同国内の若者の失業率上昇や、不動産市場の崩壊懸念、地方都市の債務問題などが解決できない状態が続く可能性があるためです(原油相場への下落圧力)。

ただし、中国政府が景気刺激策を講じて不安が後退する場面もあるかもしれません(原油相場への上昇圧力)。(通年では下落が優勢と考える)

(1)産油国の動向と(2)需要動向それぞれの、2023年の実績とそれらをもとにした2024年の見通しについて書きました。

(1)についてはどちらかといえば供給減少懸念が浮上しやすく(影響度は非西側産油国>米国)、(2)についてはどちらかといえば需要回復が期待できる(影響度は欧米>中国)と、筆者はみています。つまり、原油相場の2024年のテーマは「供給懸念と需要回復の両立」になると考えます。

図:2023年に目立った動向と2024年の予想
図:2023年に目立った動向と2024年の予想

出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。