[Vol.1630] 分析の前提条件は「多彩」になっている

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。米主要株価指数の反発などで。72.62ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。2,040.50ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。24年05月限は13,580元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。24年02月限は555.8元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1088.3ドル(前日比2.10ドル拡大)、円建てで5,083円(前日比53円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(12月19日 17時50分時点 6番限)
9,429円/g
白金 4,346円/g
ゴム 234.9円/kg
とうもろこし 37,700円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 22年8月5日午前10時35分時点)

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス
NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「分析の前提条件は『多彩』になっている」
前回は、「史上最高値を更新した23年」として、2023年のドル建て・円建て金(ゴールド)価格の推移について述べました。

今回は、「分析の前提条件は『多彩』になっている」として、NY金先物市場における取引参加者(投機筋・実需筋など)の数について述べます。

金(ゴールド)市場を取り巻く環境を確認します。近年は「材料複合化時代」にあります。このため「一つだけ」のテーマで値動きを説明することは困難を極めています。

米国の主要な株価指数の一つである「S&P500種指数」と「ドル建て金(ゴールド)」の価格推移に注目すると(2005年1月を100として指数化)、長期視点でともに価格は四倍程度になりました。ともに同じくらい高い、言い換えれば「株高・金(ゴールド)高が同じ程度で起きた」と言えます。

しばしば「金(ゴールド)と株の値動きは逆相関(二つの価格が反対に動く)の関係がある」と耳にしますが、少なくとも2005年から(特に2015年ごろから)足元まで、長期視点では順相関(二つの価格が同じ方向に動く)の傾向が強かったと言えるでしょう。株の動向だけで金(ゴールド)の値動きを説明することが難しくなっていることがわかります。

こうした傾向が強まった背景に、取引参加者が増えたことが挙げられます。以下は、NY金(ゴールド)先物市場における取引参加者の数です。取引参加者(Traders)は、CFTC(米商品先物取引委員会)に建玉などを報告する義務がある投機筋や生産者などのことで、報道で見る「投機筋」もこれに含まれます。このおよそ40年間で3倍程度に増加しました。

参加者が増加すると市場に漂う思惑が多彩になり、単一のテーマだけ(有事ムードだけ、ドルとの関係だけも、同様)で説明できない値動きが生じやすくなります。こうした変化を見て、しばしば金(ゴールド)市場は複雑化してしまった、という声を耳にしますが、個人的には複雑化よりも、「(変動要因が)多彩になった」という表現がしっくりくると感じています。

ダイバーシティ(多様性)が叫ばれている時代にあり、市場が多彩な状況は今後さらに目立つと考えられます。(今後は今よりもなお、単一のテーマだけで分析しにくくなる)

図:NY金先物市場における取引参加者(投機筋・実需筋など)の数 単位:機関
図:NY金先物市場における取引参加者(投機筋・実需筋など)の数 単位:機関

出所:米商品先物取引委員会(CFTC)のデータより筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。