[Vol.1657] EVに必要な金属は南半球にある

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反落。ドル指数の反発などで。77.42ドル/バレル近辺で推移。

金反発。米10年債利回りの反落などで。2,054.45ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。24年05月限は13,525元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。24年03月限は585.3元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1125.45ドル(前日比6.25ドル拡大)、円建てで5,311円(前日比4円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(1月31日 16時30分時点 6番限)
9,674円/g
白金 4,363円/g
ゴム (まだ出来ず)
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 22年8月5日午前10時35分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「EVに必要な金属は南半球にある」
前回は、「喜望峰ルートは完全な代替ではない」として、バブ・エル・マンデブ海峡と喜望峰の通行船数について述べました。

今回は、「EVに必要な金属は南半球にある」として、EVバッテリー資源の埋蔵量上位国(2022年)について述べます。

イエメンに拠点を置き、紅海において航行の妨害を行っているイスラム武装組織「フーシ派」は、イランの支援を受けているとされています。資金や軍事関連の物資・技術などの支援を受け、西側諸国と関わりが深い船舶を妨害しています。非西側諸国の急先鋒ともいえるイランが背後にいる以上、紅海での妨害問題は西側・非西側の分断と無縁ではありません。

EV(電気自動車)のバッテリーの原材料であるコバルト、リチウム、ニッケル、グラファイト、マンガンといった鉱物資源の埋蔵国もまた、西側・非西側の分断が確認できるテーマです。以下の図は、これらの鉱物資源の主要な埋蔵国の分布を示しています。

ロシアやトルコ、キューバなど北半球の国々でもEVのバッテリー資源を有していることが分かりますが、埋蔵シェアは南半球の国々が圧倒的に高いことが分かります。南米、アフリカ南部、東南アジアなど「南」と付く大陸の要衝となる地域が、われわれ西側のEV促進、ひいては脱炭素の命運を握っていると言っても過言ではありません。

コバルト:コンゴ民主共和国48%、豪州18%、インドネシア7%など
リチウム:チリ36%、豪州24%、アルゼンチン10%など
ニッケル:豪州21%、インドネシア、21%、ブラジル16%、ニューカレドニア7%など
グラファイト:ブラジル22%、マダガスカル8%、モザンビーク8%、タンザニア5%など
マンガン:南アフリカ38%、豪州16%、ブラジル16%など

図:EVバッテリー資源の埋蔵量上位国(2022年)
図:EVバッテリー資源の埋蔵量上位国(2022年)

出所:USGSのデータをもとにmap chartを使用して筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。