[Vol.1656] 喜望峰ルートは完全な代替ではない

著者:吉田 哲
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原油反落。米主要株価指数の反落などで。76.76ドル/バレル近辺で推移。

金反発。米10年債利回りの反落などで。2,056.80ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。24年05月限は13,510元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。24年03月限は586.1元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1118.2ドル(前日比11.90ドル拡大)、円建てで5,270円(前日比4円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(1月30日 17時46分時点 6番限)
9,665円/g
白金 4,395円/g
ゴム 281.1円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 22年8月5日午前10時35分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「喜望峰ルートは完全な代替ではない」
前回は、「中東で船舶への妨害行為が相次ぐ」として、フーシ派が妨害行為を行う紅海と欧州・東アジア間の主要な航路について述べました。

今回は、「喜望峰ルートは完全な代替ではない」として、バブ・エル・マンデブ海峡と喜望峰の通行船数について述べます。

足元、危険を回避するため、バブ・エル・マンデブ海峡を通らずに喜望峰を経由する船舶が増えています。IMF(国際通貨基金)が公表しているバブ・エル・マンデブ海峡と喜望峰の通行量(重量ベース)によれば、フーシ派による妨害行為が目立ち始めたことを受け、欧州の複数のコンテナ船大手が紅海の航行を回避することを決めた2023年12月中旬から通行量が目に見えて減少しています。

代替となったのが喜望峰ルートです。とはいえ、完全な代替とはいえません。バブ・エル・マンデブ海峡経由の通行量の減少が止まらない中、喜望峰ルートの通行量は1月初旬をピークに減少しています。

以下は、通行した船舶の数です。喜望峰ルートで航行する貨物船とタンカーの数は増加していますが、その増加数はバブ・エル・マンデブ海峡経由の減少数よりも小さいことが分かります。

喜望峰ルートは東アジア発欧州行きの場合も欧州発東アジア行きの場合も遠回りになるため、喜望峰ルートのデータがバブ・エル・マンデブ海峡経由のデータに追いつくためには数週間程度の時間が必要なのかもしれません。

とはいえ、すでに喜望峰ルートの通行量と貨物船の数がピークを打った可能性があることを考えれば、時間が経てどもバブ・エル・マンデブ海峡経由を喜望峰ルートが完全に代替することはないのかもしれません。

遠回りになることで、航行日数や運送コスト(運賃、保険、人件費など)が割高になることが嫌気されている可能性があります。バブ・エル・マンデブ海峡の通行量・船舶数の減少が続き、喜望峰ルートの同数量の頭打ち状態が続けば、物流の目詰まりと流通コストの底上げによる世界的なインフレの再燃が懸念されます。

図:バブ・エル・マンデブ海峡と喜望峰の通行船数(7日平均) 単位:隻
図:バブ・エル・マンデブ海峡と喜望峰の通行船数(7日平均) 単位:隻

出所:IMFのデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。