[Vol.1658] 非民主国家が脱炭素を支える矛盾

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。76.15ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。2,063.00ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。24年05月限は13,445元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。24年03月限は579.9元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1135.3ドル(前日比4.20ドル縮小)、円建てで5,323円(前日比16円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(2月1日 13時54分時点 6番限)
9,656円/g
白金 4,333円/g
ゴム 283.9円/kg
とうもろこし 37,220円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 22年8月5日午前10時35分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「非民主国家が脱炭素を支える矛盾」
前回は、「EVに必要な金属は南半球にある」として、EVバッテリー資源の埋蔵量上位国(2022年)について述べました。

今回は、「非民主国家が脱炭素を支える矛盾」として、西側先進国とEVバッテリー資源国の自由民主主義指数について述べます。

筆者は、西側と非西側の分断が目立っている昨今、「考え方」によって、こうした南半球の国々を西側と対峙(たいじ)する非西側に分類できると考えています。民主的な考え方で統治されているかどうかです。西側は民主的であることを正義としています。その意味で、民主的でない国は非西側に分類できます。

以下の図は、先進国(OECD(経済協力開発機構)諸国38カ国)と先ほどの南半球のEVバッテリー資源国(主要10カ国)の自由民主主義指数の推移です。スウェーデンのV-Dem研究所は毎年、世界の民主主義に関するさまざまなデータを公表しています。自由民主主義指数はその一つで「自由民主主義の理想がどの程度達成されているか?」を数値化したものです。

国家や多数派の専制から個人や少数派の権利が守られていること、憲法で保護された市民の自由、強力な法の支配、独立した司法が維持され、行政権の行使の制限が効果的に機能していること、選挙において民主主義が達成されていることなどが基準で、0から1の間で決定します。0は民主的度合いが低い、1は民主的度合いが高いことを意味します。

グラフの通り、西側の先進国は0.7から0.8の間で推移し、民主度が高いことが分かります。一方、南半球のEVバッテリー資源国は2000年以降に頭打ちとなり、2010年ごろから低下しはじめ、近年は0.5を下回っています。南半球のEVバッテリー資源国は、民主的な傾向が低下しつつあるといえます。

法の支配や独立した司法が維持されなくなると、国家間の対外的な枠組みにおけるルールの順守も危ぶまれるようになります。世界全体で目指すとしたSDGs(持続可能な成長目標)やその手段の一つであるESG(環境、社会、企業統治)を推進する力が低下したり、自国の利益を第一にする考え方がまん延したりする可能性があります。

こうした環境下で、南半球のバッテリー資源国は、温暖化を食い止めるべく自動車のEV化を推進している西側先進国に対し、友好的に協力をするでしょうか。対等な立場であることを確認した上で協力はするかもしれません。しかし、西側は少なくない見返りも求められるでしょう。

グラフが示す通り、2010年ごろから、世界の民主主義に関わる環境が変化しつつあります。先進国でさえ民主的な傾向がやや低下しています。1980年から2000年ごろまでに見られた世界全体の民主化の潮流は、今となってはもう昔の出来事です。

民主主義の停滞と言うと言い過ぎかもしれませんが、2010年ごろからは行き詰まりつつあると言えそうです。なぜ、民主主義は行き詰まりつつあるのでしょうか。

図:西側先進国とEVバッテリー資源国の自由民主主義指数(2022年まで)
図:西側先進国とEVバッテリー資源国の自由民主主義指数(2022年まで)

出所: USGSおよびV-Dem研究所のデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。