[Vol.1675] EV販売拡大で高まった脱炭素への自信

著者:吉田 哲
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原油反落。米主要株価指数の反落などで。78.08ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。2,034.50ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。24年05月限は13,965元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。24年04月限は606.8元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1151.25ドル(前日比4.15ドル拡大)、円建てで5,541円(前日比4円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(2月28日 18時07分時点 6番限)
9,825円/g
白金 4,284円/g
ゴム 301.3円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 22年8月5日午前10時35分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「EV販売拡大で高まった脱炭素への自信」
前回は、「エネルギー価格急落で広がった安心感」として、エネルギー価格の推移(2008年1月を100)について述べました。

今回は、「EV販売拡大で高まった脱炭素への自信」として、世界の電気自動車の販売台数について述べます。

「脱ウクライナ危機」に拍車をかけた要因があります。近年のEV(電気自動車)の販売拡大です。特に西側の先進国では、EV販売拡大によって「脱炭素」への自信が強まり、環境問題は解決できる、化石燃料は不要、などのムードが大きくなりつつありました。

EVが普及して化石燃料にかかわらない世界になれば、ウクライナ戦争がもたらすマイナスの影響を軽減でき、ウクライナ危機と距離を置くことができる、という考え方です。

以下の通り、世界のEV販売台数は急増の域に達しています。2020年から4倍以上になりました。化石燃料の価格や需要動向とウクライナ戦争が結びつくのは、侵攻した国が世界屈指のエネルギー大国のロシアだからです。

西側諸国は戦争勃発直後から、世界的な銀行決済網からの排除、ロシア産エネルギーの不買い、ロシアから事業撤退など、経済的、ガバナンス的な観点から、多くの制裁を繰り出してきました。こうした制裁を繰り出すことができたのも、「脱炭素」への自信が強まっていたことが大きいと考えられます。

しかし2023年9月、EV先進国の一つとされる英国がエンジン車の新車販売禁止を2030年から2035年に延期しました。EU(欧州連合)も同年、2035年にエンジン車の新車販売を「全て禁止」という方針を変更し、環境保護に適した合成液体燃料を使うエンジン車を認める方針に転換しました。EV化のスピードが鈍化する兆しが出てきています。

EV販売拡大により自信はついたものの、まだまだエネルギーに頼らざるを得ないのが現実です。

とはいえ、西側諸国は、一度言い出した環境問題を改善するための策である「脱炭素」を、引っ込めることはできません。なぜなら、すでに莫大(ばくだい)なお金が動いてしまっているからです。ESG(環境、社会、ガバナンス)を投資基準とし、特に環境問題に積極的に取り組んでいる国や企業に資金流入が相次いでいます。

こうした企業の株価や国の株価指数などをもとに組成された投資信託やETF(上場投資信託)は数えられないくらい存在します。もはや、止められなくなっているのです。何としてでも化石燃料を使わない世界を創らなくてはならない。この考えは、エネルギーと緊密なウクライナ戦争と距離を置く大きな動機になり得るでしょう。

図:世界の電気自動車の販売台数 単位:百万台
図:世界の電気自動車の販売台数 単位:百万台

出所:IEA(国際エネルギー機関)のデータより筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。