[Vol.1676] 世界の民主主義の行き詰まりも関心低下要因

著者:吉田 哲
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原油反落。米主要株価指数の反落などで。78.53ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。2,045.10ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。24年05月限は13,905元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。24年04月限は607.1元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1155.95ドル(前日比3.15ドル縮小)、円建てで5,524円(前日比13円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(2月29日 大引け時点 6番限)
9,812円/g
白金 4,288円/g
ゴム 297.0円/kg
とうもろこし 37,150円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 22年8月5日午前10時35分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「世界の民主主義の行き詰まりも関心低下要因」
前回は、「エネルギー価格急落で広がった安心感」として、世界の電気自動車の販売台数について述べました。

今回は、「世界の民主主義の行き詰まりも関心低下要因」として、自由民主主義指数0.4以下および0.6以上の国の数(1945~2022年)について述べます。

もともと世界が一枚岩になれない状況だったことも、「脱ウクライナ危機」を加速させた一因であると考えられます。ロシア非難、戦争停止を採決できないのは、世界が分断のさなかにあるためです。

以下は、スウェーデンのヨーテボリ大学のV-Dem研究所が公表する、自由民主主義指数の状況です。同指数が0.4以下の「民主的な度合いが低い国」の数と0.6以上の「民主的な度合いが高い国」の数の推移です。2010年ごろから西側と非西側の分断が進んだ様子を確認することができます。

こうした西側と非西側の分断は、「[Vol.1673] まるで『脱ウクライナ危機』」で述べた国連総会の決議の結果にも表れています。長期視点分断の流れの延長線上に、ウクライナ戦争にかかわるロシア非難の決議の分断があるといえます。

賛成が70%を上回った2023年2月の決議時にロシアを非難する賛成を選択し、かつ賛成が40%にとどまった同年12月の決議時に棄権、欠席、反対を選択した国の数、つまりエネルギー価格の急落などで事態が急変した2023年に、ロシア非難における姿勢を賛成からそれ以外に変更した国を確認すると、193カ国中63カ国が賛成からそれ以外に変更しました。

こうした国のほとんどが中南米、アフリカ、中東など自由民主主義指数が比較的低い非西側の国です。インドネシアやマレーシア、ブラジルは比較的石油を重用している(自国で生産して自国で消費、余剰を輸出している)国々です。

ロシアを強く非難する西側諸国は安定的に賛成(ロシア非難)です。それと同じ賛成を選択していた非西側の国々が昨年、賛成以外にいわば大移動したわけです。こうした大移動は、長期視点の西側・非西側の分断の延長線上にあると考えるのが自然でしょう。

危機勃発直後は世論を配慮してロシアを非難したものの、もともと一枚岩になれない分断状態にあった上、エネルギー価格が急落してウクライナ危機と距離を置く隙(すき)ができたため、分断が顕在化したと筆者は考えています。この点は「脱ウクライナ危機」を加速させたといえます。

図:自由民主主義指数0.4以下および0.6以上の国の数(1945~2022年)
図:自由民主主義指数0.4以下および0.6以上の国の数(1945~2022年)

出所:V-Dem研究所のデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。