生産量を回復させ過ぎているサウジの意図

著者:吉田 哲
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原油(WTI先物)反発。主要株価指数の反発などで。54.31ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドルインデックスの弱含みなどで。1,515.85ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。20年01月限は11,885元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。19年12月限は443.6元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで577.85ドル(前日比3.25ドル縮小)、円建てで1,990円(前日比1円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

東京市場は以下のとおり。(11月1日 17時20分頃 先限)
 5,240円/g 白金 3,250円/g 原油 36,670円/kl
ゴム 172.4円/kg とうもろこし 23,750円/t(5番限)

●東京原油 1時間足 (単位:円/キロリットル)
東京原油 1時間足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードCX」より

●本日のグラフ「生産量を回復させ過ぎているサウジの意図」

今回は前回の「ブラジルのOPEC加盟について」同様、OPECに目を向け、「生産量を回復させ過ぎているサウジの意図」として、昨晩海外メディアが公表した10月のサウジの原油生産量について書きます。

某海外メディアは毎月、直近月のOPEC加盟国各国の原油生産量の独自調査を行っており、その結果を月をまたぐタイミングで公表しています。

専門機関の確度の高い(確報値に近い)データ公表は月の半ばで、今月であれば、EIAが13日(水)、OPECが14日(木)、IEAが15日(金)です。

昨日の海外メディアのデータによれば、サウジの10月の原油生産量は日量990万バレルと、ドローン事件によって急減して日量905万バレルまで落ち込んだ9月から、V字回復したことがわかります。

前月に比べて増加幅が大きいため(前月比日量85万バレル増)、V字回復というよりも、在庫補充という意味があったにせよ、生産回復を言い訳とした増産にも見えます。

次回以降述べますが、以前の「サウジの“駆け込み増産”始まる!?」で述べた通り、減産を開始するあるいはルールを変更した上で減産延長する数カ月前から、新しく始める減産における削減量の基準を引き上げておくため、サウジは“駆け込み増産”を行ってきました。

今回のV字回復以上の生産増加は、この“駆け込み増産”の第一歩となったと筆者は考えています。

OPECあるいはOPECプラスにブラジルを引き入れることは、エクアドルが抜けて組織が不安定化しているという懸念を払しょくし、組織力を強化した上で減産を決定しようとする、ある意味減産延長決定に向けた伏線と言えますが、これに加え、このV字回復をきっかけとした駆け込み増産も減産延長決定にむけた伏線なのだと考えられます。

今月半ばに専門機関が公表する10月の生産量、そして来月以降、サウジやサウジ以外の減産参加国が生産量を増加させているかどうかに注目が集まります。

図:サウジの原油生産量 単位:百万バレル/日量
サウジの原油生産量

出所:海外主要メディアのデータをもとに筆者作成

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。