[Vol.1689] 長期低迷の元凶「まことしやかな悲観論」

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。米主要株価指数の反発などで。82.22ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。2,155.95ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。24年05月限は15,395元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。24年05月限は633.6元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1248.8ドル(前日比5.70ドル拡大)、円建てで6,046円(前日比8円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(3月19日 17時35分時点 6番限)
10,395円/g
白金 4,349円/g
ゴム 347.5円/kg
とうもろこし 38,500円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 22年8月5日午前10時35分時点)

●NYプラチナ先物(期近) 月足  単位:ドル/トロイオンス
NYプラチナ先物(期近) 月足  単位:ドル/トロイオンス


●本日のグラフ「長期低迷の元凶『まことしやかな悲観論』」
前回は、「運用上の横揺れ対策は『長期低迷銘柄も』」として、ドル建てプラチナ価格の推移(2005年~)について述べました。

今回は、「長期低迷の元凶『まことしやかな悲観論』」として、プラチナの需要内訳とフォルクスワーゲン問題について述べます。

足元、プラチナと同じ貴金属の金(ゴールド)は史上最高値水準で推移しています。それに追随し、銀も記録的な高値圏で推移しています。パラジウムはコロナショック後に一時、記録的な高値に達する高騰劇を演じました。四つの貴金属のうちプラチナだけが、急騰していません。このことはプラチナが固有の要因で急騰できなかったことを示しています。

プラチナはこの10年弱、長期低迷状態にありました。なぜ、プラチナは低迷していたのでしょうか。以下の図の通り、2015年に発覚した「フォルクスワーゲン問題」を機に、多くの金融関係者や投資家の間で、プラチナに関するまことしやかな悲観論が膨れ上がったことが、最も大きな理由だったと筆者は考えています。

2015年9月、ドイツの自動車大手フォルクスワーゲン社が違法な装置を使って排ガス浄化装置のテストを不正にくぐり抜けていたことが明らかになりました。これにより、同社の主力車種であるディーゼル車を否定する動きが強まり、同車の排ガス浄化装置に使われるプラチナの需要が激減する、プラチナ価格が急落するなどといった、まことしやかな悲観論が膨れ上がりました。

次回以降述べますがプラチナの自動車排ガス浄化装置向けの需要は急減しませんでした。しかし、プラチナ相場は長期低迷を強いられました。まことしやかな悲観論が、悲劇を生んだのです。ですが今、悲劇が生んだプラチナの「長期低迷」という特徴が、株式や株式に連動する投資信託・ETFをメインに運用する投資家を「横揺れ」から守る可能性が浮上しつつあるのです。

図:プラチナの需要内訳とフォルクスワーゲン問題
図:プラチナの需要内訳とフォルクスワーゲン問題

出所:WPICのデータおよび各種資料をもとに筆者作

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。