[Vol.1698] 分断は豊かさや正しさを求めた結果

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。中東情勢混迷による供給減少懸念などで。85.02ドル/バレル近辺で推移。

金反発。米主要株価指数の反落などで。2,282.80ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。24年09月限は14,615元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。24年05月限は650.3元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1356.25ドル(前日比10.55ドル拡大)、円建てで6,587円(前日比5円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(4月2日 17時41分時点 6番限)
11,027円/g
白金 4,440円/g
ゴム 323.3円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 22年8月5日午前10時35分時点)

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス


出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「分断は豊かさや正しさを求めた結果」
前回は、「今そこにある『世界大分断』」として、自由民主主義指数(2023年)について述べました。

今回は、「分断は豊かさや正しさを求めた結果」として、2010年以降の世界的なリスク拡大と金・原油・株高の背景(筆者イメージ)ついて述べます。

以下は、なぜ2010年ごろから分断深化がはじまったのかについて、筆者の考えをまとめた資料です。民主主義の行き詰まりは、世界分断がそこにあることを示す証であるのと同時に、逆に世界分断が民主主義の行き詰まりを加速させている一面もあります。

また、スマートフォンの世界的普及も、民主主義の行き詰まりの一因になったと考えらえられます。スマートフォンは人々の生活を豊かにしましたが、負の面ももたらしました。その一例が「大衆の渦(うず)」の肥大化です。

各種データを参照すると、2010年前後が世界のスマートフォン販売台数の本格拡大の起点になったといえます。この年以降、スマートフォンを用いたSNS(交流サイト)で同じ思想を持った人たちが結束を強め、その膨れ上がった思いをリアルの場で実現する(発散する)ことが散見されるようになりました。

2011年前後に目立った北アフリカ・中東地域での「アラブの春」では、民主化という側面はあったものの、武力を伴った前例がない規模の大衆の運動によって政権転覆が相次ぎました。後に、このアラブの春にSNSが深く関わったと報じられました。

2016年の英国のEU(欧州連合)離脱を問う国民投票で離脱が勝利したことや、同年のトランプ氏が大統領選挙に勝利したことにも、SNSが大衆の渦を増幅させたことが関連していたとの指摘があります。

もともと、大衆から人気を得ることを第一とする政治思想や活動を意味する「ポピュリズム」が、大衆を扇動して自身の政治思想を実現しようとすることを指すようになったのもこのころです。

特定のグループを強く批判する攻撃的なポピュリズムがSNSで膨れ上がりやすい性質を持っていたことに多くの人が気付いたのは、スマートフォンが世界全体にほぼ行き渡った後でした。

多くの人がスマートフォンを手にSNSを使うようになったことは、豊かさが拡大していることを象徴する出来事であるものの、その半面、悪い意味のポピュリズムを膨張させて民主主義を行き詰まらせ、分断を深める一因になったと考えられます。

われわれが普段から使用しているスマートフォンは、使い方によっては大変な武器にもなってしまうのです。

図:2010年以降の世界的なリスク拡大と金・原油・株高の背景(筆者イメージ)


出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。