[Vol.1702] 「怖くない原油高」との違いとは?

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。米主要株価指数の反発などで。86.01ドル/バレル近辺で推移。

金反発。中東情勢の混迷などで。2,357.70ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。24年09月限は14,850元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。24年05月限は660.7元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1409.65ドル(前日比4.85ドル拡大)、円建てで6,873円(前日比4円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(4月8日 16時50分時点 6番限)
11,409円/g
白金 4,536円/g
ゴム 326.5円/kg
とうもろこし (まだ出来ず) とうもろこし40,070円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 22年8月5日午前10時35分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル

出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「『怖くない原油高』との違いとは?」
前回は、「金(ゴールド)市場は素晴らしい教材」として、金(ゴールド)に関わる七つのテーマ(2024年 筆者イメージ)について述べました。

今回は、「『怖くない原油高』との違いとは?」として、西側先進国における怖い原油高と怖くない原油高について述べます。

原油相場が騰勢を強めています。WTI原油先物はおよそ5カ月半ぶりとなる1バレルあたり80ドル台後半、東京のドバイ原油先物は1キロリットルあたり8万0000円近辺で推移しています。※WTI原油は、米国のテキサス州など主要な産油地で生産される原油の総称。ウェスト・テキサス・インターミディエイト。

一口に原油高といっても、西側の先進国にとっては二つの意味があります。一つ目の意味は、旺盛な需要が存在することを暗示する好景気の証であり、株高が同時進行していることで納得感が強まる「怖くない原油高」です。原油相場を経済指標の一つとして考えている市場関係者に支持されやすい意味です。(図の右半分)

こうした市場関係者との会話において、何らかの理由を示した上で原油価格が下がるのではないかと述べると、少なくない確率で「景気が悪化すると考えているのか?」と質問が返ってきます。景気が悪くなる話をするな!と、お叱りを受けたことさえあります。原油相場をそれだけ、経済指標の一つとして重視しておられたのだと思います。

二つ目の意味は、インフレが継続していることを示唆し、中央銀行による利下げを困難にして景気回復を遅らせたり、運送や電力コストなど活動の基盤となるコストを上昇させて経済的負担を増やしたりする「怖い原油高」です。多重苦を同時発生させる大変に怖い原油高です。(図の左半分)

先週、短期的に株安・原油高が目立った時間帯があったことを考えると、足元の原油高は「怖い原油高」だと言えます。利下げを困難にしたり、経済的負荷を増やしたりする(しかもこれらを同時発生させる)原油高はなぜ起きているのでしょうか。そしてそれは今後どのようになるのでしょうか。

図:西側先進国における怖い原油高と怖くない原油高
図:西側先進国における怖い原油高と怖くない原油高

出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。