[Vol.1706] 実は、本当に怖いのはここから!?

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。米主要株価指数の反発などで。85.80ドル/バレル近辺で推移。

金反発。米10年債利回りの反落などで。2,414.15ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。24年09月限は14,695元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。24年05月限は669.7元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1401.8ドル(前日比17.10ドル拡大)、円建てで6,872円(前日比22円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(4月12日 17時10分時点 6番限)
11,813円/g
白金 4,941円/g
ゴム 315.0円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 22年8月5日午前10時35分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル

出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「実は、本当に怖いのはここから!?」
前回は、「2010年ごろから続く流れの延長線上」として、2010年以降の世界的なリスク拡大と金・原油・株高の背景(筆者イメージ)について述べました。

今回は、「実は、本当に怖いのはここから!?」として、OPECプラスの原油生産量について述べます。

原油相場の今後の展開を考えます。短期的には、中東情勢がさらに悪化する可能性があります。米国は3月の国連安保理決議で、イスラエルを擁護する姿勢を初めて崩しました。これまでイスラエルの権利を守る、という大義名分の下、停戦に関する決議に拒否権を発動し続けてきましたが、3月の決議では棄権を選択しました。

これに対し、イスラエルのネタニヤフ首相は「明らかな後退」と怒りをあらわにしました。態度が先鋭化したイスラエルの次の行動が、シリア空爆でした。イスラエルと対峙(たいじ)するイスラム武装組織は、中東地域に点在しています。

こうしたイスラム武装組織とイスラエルをめぐる情勢が悪化し、同地域からの原油の供給減少懸念が高まる可能性は否定できません。

Energy Instituteのデータによれば、中東地域からの原油輸出シェアはおよそ35%です(2022年)。イランと考え方の方向性が似ているロシアを合わせると47%です。足元のリスクが高まれば高まるほど、供給減少懸念が高まり、引いては「怖い原油高」を加速させる可能性があります。

また、以下はOPECプラスの原油生産量の推移です(継続性を維持するため脱退したアンゴラを含んでいる)。減産期間中にあり、全体として生産量が上限を上回らない(減産順守)状態が続いています。さらには、自主減産を強化してさらなる生産削減に励んでいることがうかがえます。

組織内では、個別に上限を上回ってしまった国が、後のタイミングで上回った分を削減して生産する埋合せを実施しており、需給バランスを引き締める策を強化しています。こうした強い意志はどこから来るのでしょうか。西側・非西側の分断深化が、彼らを減産徹底に駆り立てている可能性があります。

目先、材料の頂点は、中央銀行ではなく、原油相場があることを意識する必要があると、筆者は考えています。まだ目先、「怖い原油高」が続く可能性があり、注意が必要です。

図:OPECプラスの原油生産量 単位:百万バレル/日量
図:OPECプラスの原油生産量 単位:百万バレル/日量

出所:OPECの資料およびブルームバーグのデータより筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。