[Vol.1716] 突出した高騰劇を演じるココアとコーヒー

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。84.14ドル/バレル近辺で推移。

金反発。米10年債利回りの反落などで。2,360.70ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。24年09月限は14,195元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。24年06月限は653.3元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1435.85ドル(前日比13.85ドル拡大)、円建てで7,217円(前日比123円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(4月26日 19時26分時点 6番限)
11,838円/g
白金 4,621円/g
ゴム 306.0円/kg
とうもろこし 40,860円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 22年8月5日午前10時35分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル

出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「突出した高騰劇を演じるココアとコーヒー」
前回は、「世界分断は『ESG』と『SNS』で深化した」として、「ESG」「SNS」が食品価格を高止まりさせた経緯について、筆者の考えを述べました。

今回は、「突出した高騰劇を演じるココアとコーヒー」として、農産物価格の騰落率(2020年年初と直近を比較 米国の先物市場)、筆者の考えを述べます。

2020年の年初(コロナショック直前)と足元を比較すると、カカオの価格は4.2倍、冷凍オレンジジュースは3.7倍、コーヒーは2.3倍、赤身豚肉は1.6倍、生牛は1.4倍、砂糖は1.3倍です。

急騰劇が大きく報じられている金(ゴールド)が1.5倍、原油が1.6倍であることを考えると、原油などの大型商品に比べて市場規模が小さい農産物銘柄は、人知れず急騰を演じてきたと言えます。

こうした農産物銘柄の高騰は、食品価格高の大きな要因です。世界分断がもたらす産油国に絡む戦争をきっかけとした供給減少懸念、減産という名の出し渋りとは別の要因です。

こうした農産物相場を長期視点で下支えする材料には、少なくとも次の四つがあります。(1)異常気象起因の主要生産国での生産量減少、(2)嗜好(しこう)品を求める人口の増加、(3)ESG起因の生産者寄りの価格設定の普及、(4)長引く電気・輸送・燃料などの生産コスト上昇、などです。

今後、原油相場の高止まりが長期化した場合、(4)が目立つことが考えられます。その時、(1)から(3)が同時進行していた場合、食品価格高はなお際立つ可能性があり、注意が必要です。

図:農産物価格の騰落率(2020年年初と直近を比較 米国の先物市場)
図:農産物価格の騰落率(2020年年初と直近を比較 米国の先物市場)

出所:Investing.comのデータを基に筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。