[Vol.1728] ぜいたく品を奪われる西側

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。米主要株価指数の反発などで。79.31ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。2,388.70ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。24年09月限は14,685元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。24年07月限は617.0元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1321.1ドル(前日比6.90ドル拡大)、円建てで6,658円(前日比63円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(5月17日 17時37分時点 6番限)
11,963円/g
白金 5,305円/g
ゴム 323.2円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 22年8月5日午前10時35分時点)

●NY金先物(期近) 月足  単位:ドル/トロイオンス
NY金先物(期近) 月足  単位:ドル/トロイオンス

出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「ぜいたく品を奪われる西側」
前回は、「爆食の影響は西側諸国に」として、ベトナムのコーヒー輸出先(数量ベース 2022年)について述べました。

今回は、「ぜいたく品を奪われる西側」として、金(ゴールド)に関わる七つのテーマ(2024年 筆者イメージ)について述べます。

足元の状況は、中国がドリアンを使って西側諸国からコーヒーを奪おうとしているように見えなくありません。中国でドリアンブームが起きていなければ、ロブスタ価格がここまでの高騰劇を演じたり、それによって西側の国々のコーヒー事情に悪影響が生じたりすることはなかったのではないか…そう考えてしまいます。

膨大な需要を掘り起こすことができるのが、中国の強みです。経済が成熟し、飽和状態に至った西側先進国にはない、大変に大きな強みです。それを利用すれば間接的に、西側からコーヒーのようなぜいたく品を奪えることが、足元のドリアンブームが示唆していると筆者はみています。

ベトナムでドリアンへの転作が進んだ背景には、少なからず輸出先が中国だったことが影響していると考えられます。中国の影響が強く及んでいる資源国は、農産物に限らず、金属やエネルギーなど、多数あります。

西側諸国の「市民の心」に影響を及ぼすのであれば、市民が口にするぜいたく品を奪うことが有効でしょう。コーヒー、その次は砂糖でしょうか、カカオか、紅茶か、スパイスか、バナナやアボカドなども候補になるかもしれません。

食を脅かされることに不安を感じない市民はほとんどいないでしょう。非西側にぜいたく品を奪われる恐怖(屈辱も)は、西側社会に漠然とした不安をもたらすでしょう。

こうした不安は、筆者が掲げる金(ゴールド)市場をとりまく七つのテーマの最後にあたる、超長期視点のテーマ「見えないリスク」を強める要因になり得ます。

非西側の大国である中国は、次はどんな需要を喚起し、何を西側から奪おうとするのでしょうか。中国の食におけるブームがどの品目で起きているのか、その品目を代替できる国がどこかなどに、今後、超長期視点で注視していく必要がありそうです。

図:金(ゴールド)に関わる七つのテーマ(2024年 筆者イメージ)
図:金(ゴールド)に関わる七つのテーマ(2024年 筆者イメージ)

出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。