[Vol.1730] FRBはOPECプラスに影響できない

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反落。米主要株価指数の反落などで。78.69ドル/バレル近辺で推移。

金反落。米10年債利回りの反発などで。2,421.30ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。24年09月限は14,725元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。24年07月限は612.6元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1376.5ドル(前日比1.70ドル拡大)、円建てで6,980円(前日比48円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(5月21日 17時42分時点 6番限)
12,157円/g
白金 5,177円/g
ゴム 323.0円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 22年8月5日午前10時35分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル


出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「FRBはOPECプラスに影響できない」
前回は、「原油価格、歴史的高止まり続く」として、世界の原油価格(主要三油種の年間平均)について述べました。

今回は、「FRBはOPECプラスに影響できない」として、供給減少懸念と需要増加観測(一例)について述べます。

足元の原油相場を高止まりさせている供給減少懸念と需要増加観測は、以下のように示すことができます。供給減少懸念は中東地域、ロシア、OPECプラスで、需要増加観測は米国、中国、欧州で浮上しています。

需要増加観測は、観測はあるもののすぐさま需要が急増するわけではなく、比較的時間軸が長い材料だといえます。このため、足元の高止まりを支えている直接的な要因は供給減少懸念であるといえます。

FRBが関与できる箇所が限られていることにも、注目が必要です。2022年前半から2023年半ばまで、利上げによって「インフレ退治」を進めてきたFRBの意図は、景気を冷やして需要を減退させ、原油をはじめとしたさまざまなコモディティの価格を落ち着かせることでした。

FRBは金融政策のかじ取りをすることで、一定程度、米国や米国と結びつきが強い国の需要を喚起したり冷ましたりすることができるわけですが、原油相場はFRBが関与できない要因の影響を多分に受けています。

FRBの要人が主要産油国のグループであるOPECプラス※の会合に出席することはありません。※OPECプラス…23カ国の産油国のグループ。サウジアラビアやイラクなどOPEC側12カ国、ロシアやカザフスタンなど非OPEC側11カ国(2024年5月時点)。

その意味で、FRBがいくらがんばったところで足元の原油相場の高止まりを解消する(原油相場を急落させる)ことはできません。原油相場は世界全体の需要と供給の影響を受けて推移しています。「米国や米国と結びつきが強い国」という一部の地域の、「需要」という需給バランスの半分だけを操作できるだけでは、原油相場を動かすことはできないのです。

世界全体といえば、世界の電源構成の推移を確認すると、化石燃料が重用される環境は今でも続いています。確かに2010年ごろから再生可能エネルギーを利用した発電量は増えてきていますが、世界全体で言えば、まだまだ化石燃料は必要なのです。

もし発電向けの化石燃料の使用をゼロにした場合、世界から60%超の電力が失われます(2022年の実績より試算)。こうした状況もまた、化石燃料を(ひいては原油を)使い続ける動きを助長しているといえます。そしてやはり、この流れにFRBが関わることはできません。

図:供給減少懸念と需要増加観測(一例)


出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。