[Vol.1735] 「あの2022年」が示唆する現代の相場事情

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。米主要株価指数の反発などで。78.89ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。2,353.10ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。24年09月限は15,445元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。24年07月限は612.7元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1286.25ドル(前日比1.45ドル縮小)、円建てで6,563円(前日比4円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(5月28日 12時01分時点 6番限)
11,895円/g
白金 5,332円/g
ゴム 340.0円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 22年8月5日午前10時35分時点)

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス


出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「『あの2022年』が示唆する現代の相場事情」
前回は、「2022年の金(ゴールド)相場は上昇・下落?」として、金(ゴールド)相場の核心部を照らす問いについて述べました。

今回は、「『あの2022年』が示唆する現代の相場事情」として、「2022年」の金(ゴールド)に関わる七つのテーマ(筆者イメージ)について述べます。

なぜ2022年の金(ゴールド)相場が、多くの市場関係者が心得ている「戦争勃発=金(ゴールド)上昇」、「有事の金(ゴールド)買い」などの過去の出来事や言い伝えどおりに動かなかったのでしょうか。

答えは大変にシンプルです。現代の金(ゴールド)相場が、有事だけで動いていないためです。有事とそれ以外のいくつかのテーマを同時に考慮しなければ、今どきの金(ゴールド)相場を分析することはできません。

以下は、筆者が提唱する金(ゴールド)相場に関わる七つのテーマです。円建て金(ゴールド)の場合は、ドル/円を含めた八つです。金(ゴールド)相場には、大小あれども絶えず、これらからの圧力がかかっています。その圧力の方向性や大きさはその時々で変化します。

「あの2022年」について言えば、短中期的なテーマである有事ムード(不安発生時の資金の逃避先需要)、代替資産(株の代わり)、代替通貨(ドルの代わり)の三つの起因の圧力の方向性は、「有事ムード」と「代替資産」が上昇、「代替通貨」が下落でした。圧力の大きさについては、「代替通貨」起因の下落圧力が二つの上昇圧力を相殺して余りあるほど、大きなものでした。

つまり、有事ムード起因の上昇圧力は代替資産起因の上昇圧力とともに、米国の急激な利上げがもたらした代替通貨起因の下落圧力にかき消されたのです。これが「あの2022年」に金(ゴールド)の国際相場が下落した真相だと、筆者は考えています。

付け加えて言えば、代替通貨起因の大きな下落圧力をもたらした米国の急激な利上げは、急激なドル高を引き起こし、そのドル高が急激な円安をもたらし、その円安が円建て金(ゴールド)相場に強い上昇圧力をかけました。

「あの2022年」の金(ゴールド)相場の値動きは、わたしたち市場関係者に、今どきの金(ゴールド)相場が有事だけで動いていないこと、一つのテーマだけに注目をして分析することはできないこと、複数のテーマ起因の圧力を相殺しなければならないこと、円建て金(ゴールド)はドル/円が円安方向に急進した場合、国際価格が下落していても上昇し得ることなどを教えてくれています。

まさに、「2022年の金(ゴールド)の国際相場は上昇したでしょうか?下落したでしょうか?」という問いは、現代の金(ゴールド)相場の核心部に触れる良問だと言えます。

図:「2022年」の金(ゴールド)に関わる七つのテーマ(筆者イメージ)


出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。