[Vol.1745] 産油国の詩(ポエム)は叫びのよう

著者:吉田 哲
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原油反落。米主要株価指数の反落などで。77.55ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。2,322.75ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。24年09月限は15,535元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。24年07月限は597.6元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1362.55ドル(前日比12.25ドル拡大)、円建てで6,823円(前日比22円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(6月11日 18時23分時点 6番限)
11,677円/g
白金 4,854円/g
ゴム 346.9円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 22年8月5日午前10時35分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「産油国の詩(ポエム)は叫びのよう」
前回は、「自主減産縮小でも大増産は起きない」として、OPECプラスの減産(イメージ)について述べました。

今回は、「産油国の詩(ポエム)は叫びのよう」として、「協力宣言の詩」(抜粋)について述べます。

2016年9月の「アルジェ合意」でOPECプラスの構想が固まり、同年12月の「ウィーン合意」でOPEC加盟国と一部の非加盟国が合意し、OPECプラスが誕生しました。この時の思想は今でも引き継がれています。実際に、7年が経過した2023年12月の会合でもこれらが「再認識」されました。

長く続くOPECプラスの行動の原点が、彼らが2019年7月に公表した詩(ポエム)に集約されています。以下はその抜粋と日本語訳です。彼らの目的は「安定」です。大変にシンプルです。2016年のアルジェ合意前の環境を「悪い状態」としていることから、安い原油価格を望んでいないことが分かります。逆に原油価格が高いことが、彼らにとっての「安定」だと言えます。

そして目的達成のために、お互い監視をし合いながら、行動することが書かれています。原油価格を高くして安定的な環境を手に入れるためであれば、監視し合う、ある意味厳しい環境に身を置くことも辞さない、というのが彼らの考え方です。

協調減産開始後、アンゴラやエクアドルなど、OPECを脱退した国はいくつかありますが、このような環境に合わなくなったことが脱退の主な要因だと考えられます。アンゴラは2025年12月までの生産枠の設定が済んでいた(減産を続ける用意はあった)にも関わらず脱退しました。

OPECの資料を確認する限り、減産を厳密に行うために全体的に行われた原油生産量の評価の仕組みの変更が、アンゴラ自身にとって不利だったためだと、考えられます。報じられているような、「OPECプラスの足並みの乱れ」ではなく、組織として減産を厳格に守ろうとするルールに合わなくなったため、であると考えられます。

2016年12月(ウィーン合意)を前にして、当時はしばらく悪い状態が続いていた、との記載があります。原油価格がどのくらい安いと悪いと感じるのでしょうか。

世界の原油価格(主要三油種の年間平均)において、2016年は40ドル近辺でした。彼らはこうした価格帯を大変に嫌っていると言えます。こうした価格に戻りたくないため、監視をし合いながら厳格に減産を行っているのです。この点が、実際の生産量が生産量の上限を上回る可能性が低いと考える理由です。

先ほどの、しばらく悪い状態が続いていた(things had been bad for a while)、を読み返すと、筆者には「二度とあのような状態には戻りたくない」「戻らなくてよいように、いかなる苦労を惜しまない」という覚悟がにじんで見えます。まさに、この詩(ポエム)は叫びなのだと感じます。

図:「協力宣言の詩」(抜粋)2019年7月2日の会合で確認
図:「協力宣言の詩」(抜粋)2019年7月2日の会合で確認
出所:OPECの資料より筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。