[Vol.1744] 自主減産縮小でも大増産は起きない

著者:吉田 哲
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原油反落。米主要株価指数の反落などで。75.67ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。2,308.90ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。24年09月限は16,020元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。24年07月限は583.9元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1332.7ドル(前日比22.05ドル縮小)、円建てで6,693円(前日比158円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(6月10日大引け時点 6番限)
11,610円/g
白金 4,917円/g
ゴム 356.5円/kg
とうもろこし 39,480円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 22年8月5日午前10時35分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「自主減産縮小でも大増産は起きない」
前回は、「はじめ低迷・あと上昇はプラチナで可能」として、積み立てシミュレーション(3パターンの累積保有数量)について述べました。

今回は、「自主減産縮小でも大増産は起きない」として、OPECプラスの減産(イメージ)について述べます。

OPEC(石油輸出国機構)は現在、一部の非加盟国とともに原油の減産を実施しています。2017年1月にはじまった協調体制を彼ら自身、DoC(協力体制 Declaration of Cooperation)と呼んでいます(自らをOPECプラスとは呼んでいない)。

減産に参加しているOPECプラスの原油生産量のイメージは以下のとおりです。自主減産を段階的に終了することとなったものの、大幅に順守している状態にある協調減産は2025年12月まで継続することが決まっています。


図のとおり、自主減産が縮小し、仮に生産量が上限一杯に達したとしても、2018年や19年の生産水準を上回ることはありません。後述しますが、彼らは強い覚悟で減産を行っており、生産量が上限を超えて減産非順守に陥ることはないと、筆者はみています。その意味では、自主減産の縮小が、大幅な供給過剰をもたらす理由にはならないと言えます。

彼らは自らの武器である高い生産シェア(およそ54%、2024年5月時点)を利用し、たくみに生産量を調整したり、世論のすきまを縫ったりしています。原油価格を高止まりさせられるように、細心の注意を払いながら生産活動を行っているのが、今のOPECプラスだといえます。

彼らはなぜ、強い覚悟で減産を行っているのでしょうか。次回以降、OPECプラスの思想が垣間見える、詩(ポエム)に着目します。

図:OPECプラスの減産(イメージ) 単位:万バレル/日量
図:OPECプラスの減産(イメージ) 単位:万バレル/日量
出所:ライスタッドエナジー、JODIのデータおよびOPECの資料をもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。