[Vol.1752] EV・AI起因の需要増加はまだ続きそう

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。80.78ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。2,353.00ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。24年09月限は15,085元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。24年08月限は617.9元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1364.35ドル(前日比5.35ドル縮小)、円建てで6,899円(前日比3円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(6月20日 19時56分時点 6番限)
11,939円/g
白金 5,040円/g
ゴム 333.9円/kg
とうもろこし 40,550円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 22年8月5日午前10時35分時点)

●NY銅先物(期近) 日足  単位:ドル/ポンド
NY銅先物(期近) 日足  単位:ドル/ポンド
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「EV・AI起因の需要増加はまだ続きそう」
前回は、「投機資金の原資はまだまだ潤沢」として、FRBの資産の額について述べました。

今回は、「EV・AI起因の需要増加はまだ続きそう」として、世界のEV販売台数について述べます。

銅が持つ、電気を効率よく通す、加工しやすいなどの特徴は、電化が進む上で重宝されます。このため、西側諸国が進めている環境配慮の動きの一つ「脱炭素」に、銅は大変になじみます。

以下は、底値水準を大幅に上昇させた一因である、EVなど脱炭素関連需要の膨張を示すデータです。世界のEVの販売台数が急激に増え始めたことを受けて、私たちも世界規模で自動車の電化が進んでいる実感が湧くようになってきました。

IEA(国際エネルギー機関)のデータによれば、2023年の世界全体の電気自動車の販売台数はおよそ1,300万台でした。2020年以降はそれまでに比べて増加のスピードが増しています。各国の脱炭素への思いが徐々に形になってきた印象があります。

IEAは今後もこのスピードで増加が続くとし、2035年は今の4.6倍にあたる、6,300万台になると予想しています。世界の自動車販売台数が今と変わらなければ(およそ9,300万台)、世界で販売される自動車の3台に2台がEVになる計算です。この予想が現実になれば、それに使われる銅をはじめとした非鉄金属の需要は膨張状態に入る可能性があります。

AIブームによって急増している半導体の売上額の推移を確認すると、1990年代は日本の存在が大きかったことがうかがえます。そして2000年ごろから状況が一変し、2010年ごろから変化に拍車がかかりました。

現在も、中国を含むアジア太平洋の売上額急増が続いています。WSTS(世界半導体貿易統計)は、2024年も2025年も、勢いを伴った増加が続くと予想しています。AIブームを支えるべく、電子製品の工場やデータセンターを増設する動きが続いており、そうした施設の電線などには、やはり銅が多用されています。

銅や非鉄金属価格の底値水準を大幅に上昇させた一因とみられる、EV関連の需要や、AI関連のインフラ・電子機器向け需要増加は、「脱炭素」が否定されたり、AIブームが終焉(しゅうえん)を迎えたりしない限り、継続する可能性があります。

図:世界のEV販売台数 単位:百万台
図:世界のEV販売台数 単位:百万台
出所:IEAのデータを基に筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。