[Vol.1756] 米ドル離れ・金(ゴールド)寄り傾向に

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。81.56ドル/バレル近辺で推移。

金反落。米10年債利回りの反発などで。2,328.40ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。24年09月限は15,100元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。24年08月限は620.3元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1316.8ドル(前日比15.00ドル縮小)、円建てで6,806円(前日比10円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(6月26日 18時23分時点 6番限)
11,945円/g
白金 5,139円/g
ゴム 335.5円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 22年8月5日午前10時35分時点)

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス
NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「米ドル離れ・金(ゴールド)寄り傾向に」
前回は、「先進国と新興国の思惑の差が垣間見える」として、中央銀行がアンケートで回答した、金(ゴールド)保有時の意思決定に関連するトピックは何ですか?(2024年)の結果について述べました。

今回は、「米ドル離れ・金(ゴールド)寄り傾向に」として、中央銀行がアンケートで回答した、5年後、中央銀行の金(ゴールド)の保有比率(現在16%)はどうなると思いますか?(2024年)の結果について述べます。

中央銀行はさまざまな意図を持ち、外貨準備高や金(ゴールド)を管理しています。以前の「[Vol.1754] 中央銀行は今や『クジラ』のような存在」で述べたアンケート調査では、今後の方針を問う質問もなされました。5年後、米ドル、ユーロ、人民元、金(ゴールド)の保有割合はどの程度になると思うか、という質問です。(ここでは米ドルと金(ゴールド)の結果を記載)。

「米ドル(現在の保有比率49%)」については、先進国、新興国ともに、多くが米ドルの保有比率は低下すると回答しました。先進国と新興国合わせて62%が低下すると回答しました。おととしは42%、昨年は55%だったため、米ドルの保有比率が低下すると考える中央銀行の割合が上昇傾向にあることが分かります。

先進国だけで見ても、低下(43%)と大きく低下(13%)を合わせた56%が、米ドルの保有比率が低下すると回答しました。先進国においても、米ドル離れの思惑が浮上しつつあると言えます。新興国は大きく低下(13%)と低下(51%)を合わせた64%でした。

以下は「金(ゴールド)(現在の保有比率16%)」についてです。先進国、新興国ともに、多くが金(ゴールド)の保有比率は上昇すると回答しました。先進国と新興国合わせて69%が上昇すると回答しました。おととしは46%、昨年は62%だったため、金(ゴールド)の保有比率が上昇すると考える中央銀行の割合が上昇傾向にあることが分かります。

先進国だけで見ても、上昇と回答した割合は半数超の57%に上りました。先進国においても、金(ゴールド)寄りの思惑が強まりつつあると言えます。新興国は上昇(71%)と大きく上昇(4%)を合わせた75%が、金(ゴールド)の保有比率が上昇すると回答しました。

全体的に見て、中央銀行の「米ドル離れ・金(ゴールド)寄り」の傾向が強まっていると言えます。金(ゴールド)は危機時に注目が集まる、という思惑が継続して意識されていること、そして特に新興国の中央銀行の間で、前回述べた「世界経済のパワーシフト」や「実物資産への回帰」という切り口で改めて、金(ゴールド)が選好されていることが背景にあると考えられます。

図:5年後、中央銀行の金(ゴールド)の保有比率(現在16%)はどうなると思いますか?(2024年)
図:5年後、中央銀行の金(ゴールド)の保有比率(現在16%)はどうなると思いますか?(2024年)
出所:WGCの資料を基に筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。