[Vol.1771] 「怖がらせる営業」は実は今でも存在する

著者:吉田 哲
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原油反落。米主要株価指数の反落などで。81.25ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。2,468.30ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。24年09月限は14,615元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。24年09月限は618.6元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1454.7ドル(前日比2.90ドル拡大)、円建てで7,363円(前日比11円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(7月18日 19時28分時点 6番限)
12,429円/g
白金 5,066円/g
ゴム 318.6円/kg
とうもろこし 38,030円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 22年8月5日午前10時35分時点)

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス
NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「『怖がらせる営業』は実は今でも存在する」
前回は、「『顧客本位の業務運営』と『怖い』」の関係として、フィデューシャリー・デューティーと「有事の金(ゴールド)」を確認しました。

今回は、「『怖がらせる営業』は実は今でも存在する」として、改めてフィデューシャリー・デューティーと「有事の金(ゴールド)」を確認します。

ウクライナ戦争が勃発直後の2022年3月、筆者は「有事(戦争勃発)が与える金(ゴールド)・原油への影響」という趣旨の発言をしました。この中でイラン・イラク戦争勃発(1980年9月)と、湾岸戦争勃発(1991年1月)直後に、金(ゴールド)価格が下落したことについて触れました。

この発言がとある関係者の耳に入り、戦争勃発直後に金(ゴールド)価格が下がるというアナリストは「常識がない」と、筆者は批判を受けました。確かに、同戦争の勃発直後、筆者が知る金融機関の人々は「戦争が起きたから金(ゴールド)価格は上がるしかない」との考えで一致していました。

彼らの共通点は、「金融商品を売る側」でした。戦争勃発が金(ゴールド)を売る絶好のタイミングだと思ったのでしょう。そして、それを否定的に述べた筆者のことを、苦々しく思ったのだと思います。(2022年の金(ゴールド)の国際相場は「下落」だった)

彼らには、戦争が勃発したから人々の恐怖をあおってよい→(戦争勃発で)株式市場が混乱しているので、余計に恐怖をあおりやすい→そして1970年代後半の「有事の金(ゴールド)買い」だった分かりやすい例を示す→多くの投資家が金(ゴールド)を買うだろう、これを否定するアナリストには常識があるはずがない、という思考があったのだと思います。

こうした彼らにとっての常識は、果たして「顧客本位の業務運営」の考えにのっとっているのでしょうか。数十年先の顧客の未来ではなく、今月の自分の業績や会社の中の自分の立場を見ている姿勢は、あの商品先物の営業マンと本質的に何も違いません。

お客さまの資産形成の伴走者は、投資の考え方の方向性を微調整することはあっても、人の持つ特性を逆手に取ることはしないでしょう。

図:フィデューシャリー・デューティーと「有事の金(ゴールド)」
図:フィデューシャリー・デューティーと「有事の金(ゴールド)」
出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。