[Vol.1775] 過去の常識を捨てて上昇シナリオを描く

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。週初から続いていた下落の反動などで。77.52ドル/バレル近辺で推移。

金反発。米10年債利回りの反落などで。2,414.00ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。24年09月限は14,545元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。24年09月限は588.7元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1446.4ドル(前日比5.10ドル縮小)、円建てで7,260円(前日比53円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(7月24日 17時16分時点 6番限)
12,044円/g
白金 4,784円/g
ゴム 320.6円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 22年8月5日午前10時35分時点)

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス
NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「過去の常識を捨てて上昇シナリオを描く」
前回は、「材料の頂点がFRBである時に連動しやすい」として、株と金(ゴールド)の値動きの関係を確認しました。

今回は、「過去の常識を捨てて上昇シナリオを描く」として、金(ゴールド)に関わる七つのテーマ(2024年 筆者イメージ)を確認します。

下の図は、筆者が考える、現代の金(ゴールド)市場と向き合う上で必要な七つのテーマです。足元の株と金(ゴールド)の値動きが、教科書や過去の常識のとおりになっていない理由についても、説明することが可能です。

足元の値動きに関わる短中期のテーマは、「有事ムード(資金の逃避先需要)」「代替資産(株の代わり)」「代替通貨(ドルの代わり)」の三つです。

ウクライナ戦争や中東情勢混迷などにより、「有事ムード」起因の金(ゴールド)相場への上昇圧力が発生している中で、FRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策が緩和的になりつつあることで、景気回復期待が増幅して「代替資産」起因の下落圧力が、同時にドル安観測が浮上して「代替通貨」起因の上昇圧力が発生し、これらが相殺され、上昇圧力が優位な状態が続いていると考えられます。

これが、足元の株高・金(ゴールド)高の説明です。

ウクライナ戦争が勃発した2022年に金(ゴールド)相場が下落したことも、短中期のテーマに当てはめれば、簡単に説明できます。

ウクライナ戦争が勃発した2022年に金(ゴールド)相場が下落したのは、FRBの急激な利上げでドル高が進み、それにより発生した「代替通貨」起因の強い下落圧力が、「有事ムード」と「代替資産」起因の上昇圧力を相殺したためです。

有事だけ、株との関係だけ、ドルとの関係だけなど、教科書に書かれている、材料を点で見る分析は、今は通じません。図で記したテーマに沿って丁寧に材料を分類し、圧力の大きさを推測していかなければ、精緻な分析はできません。材料の頂点に「金融政策」がある時は特に、教科書や過去の常識に頼ってはならないのです。

株と金(ゴールド)の値動きが、2010年ごろ以降、極端に離れていることからも分かる通り、市場環境は明らかに大きく変化しています。分析手法は市場環境の変化に応じて更新されなければなりません。今どきの市場環境向けに更新された分析手法が、先ほど述べた七つのテーマなのです。

図:金(ゴールド)に関わる七つのテーマ(2024年 筆者イメージ)
図:金(ゴールド)に関わる七つのテーマ(2024年 筆者イメージ)
出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。