[Vol.1819] 金(ゴールド)の短期・長期投資の勘所

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反落。米主要株価指数の反発などで。67.64ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。2,687.10ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。25年01月限は18,555元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。24年11月限は524.4元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1683.1ドル(前日比0.40ドル縮小)、円建てで7,683円(前日比181円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(9月27日 16時34分時点 6番限)
12,294円/g
白金 4,611円/g
ゴム 388.6円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 1,945円/mmBtu(24年12月限 9月24日17時26分時点)

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス
NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「金(ゴールド)の短期・長期投資の勘所」
前回は、「米国で『利下げ』は始まったばかり」として、FF(フェデラルファンド)レートとNY金(ゴールド)価格の推移を確認しました。

今回は、「金(ゴールド)の短期・長期投資の勘所」として、金(ゴールド)に関わる七つのテーマ(2024年 筆者イメージ)を確認します。

下の図は、筆者が考える、現代の金(ゴールド)市場と向き合う上で必要な七つのテーマです。この図でも、足元の株と金(ゴールド)の値動きが、教科書や過去の常識のとおりになっていないことを説明することができます。

足元の値動きに関わる短中期(局面)のテーマは、「有事ムード(資金の逃避先需要)」「代替資産(株の代わり)」「代替通貨(ドルの代わり)」の三つです。

足元、ウクライナや中東の情勢悪化により、「有事ムード」起因の金(ゴールド)相場への上昇圧力が発生している中で、FRBが利下げを開始したことで、ドル安観測が浮上して「代替通貨」起因の上昇圧力と、同時に景気回復期待が増幅して「代替資産」起因の下落圧力が強まっています。

そしてこれら三つの圧力が相殺され、上昇圧力が優位な状態が発生していると、考えられます。利下げが続く限り、こうした状況が続く可能性がありますが、数年・数十年など、中長期・超長期(時代)で続く材料にはなり得ないと考えられます。

利下げが長期間にわたって続くかどうかは、未知数だからです。金融政策はその時の局面で変化する傾向があります。金融政策については、「局面」で捉えるものであり、「時代」で捉えるものではないと、筆者はみています。

株と金(ゴールド)の値動きが、2010年ごろ以降、極端に離れていることからも分かる通り、市場環境は明らかに大きく変化しています。分析手法は市場環境の変化に応じて更新されなければなりません。今どきの市場環境向けに更新された分析手法が、先ほど述べた七つのテーマです。

中長期視点で金(ゴールド)相場を追うためには、「2010年ごろ」に注目する必要があります。株と金(ゴールド)の値動きが極端に離れ始めた、市場環境が大きく変化し始めたタイミングです。2010年は、中央銀行による金(ゴールド)の買い越し(購入数量が売却数量を上回った状態)が始まった年でした。

中央銀行が金(ゴールド)を保有する主な理由は、「長期的な価値保全/インフレヘッジ」「危機時のパフォーマンス」「効果的なポートフォリオの分散化」「歴史的地位」などです。

新興国の中央銀行に限っていえば、「制裁への懸念」「政策ツール」「国際通貨システムの変化の予期」などが金(ゴールド)を保有する理由になる場合もあります。

2023年の中央銀行の金(ゴールド)の買い越し量は、金(ゴールド)の全需要のおよそ23%に達しました。中央銀行の存在は金(ゴールド)市場にとって、大変に大きいといえます。中央銀行の買いが継続することで、米国の利下げとは別文脈の、長期視点の上昇圧力がかかることが想定されます。

米国の利下げの流れによる上昇の「局面」を短期売買で捉えつつ、中央銀行の買いの流れによる上昇の「時代」を長期積立投資で捉えるのも、一計なのかもしれません。

図:金(ゴールド)に関わる七つのテーマ(2024年 筆者イメージ)
図:金(ゴールド)に関わる七つのテーマ(2024年 筆者イメージ)
出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。