週刊石油展望

著者:児玉 圭太
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 先週末のWTI原油は前週比1.35ドル高の75.02ドル、ブレント原油は0.92ドル高の78.51ドルとなった。

 前週末の海外原油は引き続き中東情勢の緊迫化は支えとなった一方、バイデン大統領がイスラエルによるイラン石油施設への攻撃は支持しないと伝わったほか、米雇用統計が予想以上に強い内容となったことからドル高進行したことが重しとなり上げ幅を縮小する展開となった。

 先週は高値警戒感から戻り売りに押される場面も見られたが、週末にかけては米ハリケーンや地政学リスクの再燃で上昇すると週間ベースでは続伸する展開となった。週明け7日はイランがヒズボラやハマスなどの武装組織と正式な軍事同盟を結成するための法案を起草していると伝わったことで中東の地政学リスクへの警戒感が高まり大幅続伸する格好となった。翌8日はヒズボラ副指導者がレバノン停戦に向けたナビ・ベリ国会議長の取り組みを支持すると述べたことで停戦観測が浮上したことが重しとなった。翌9日はEIA統計において原油在庫が581万bblと予想を上回る増加幅となったことが嫌気され軟調な推移となった。また、連休明けに発表された中国の追加の景気刺激策が期待外れな内容だったことから上海や香港株が急落したことも重しとなった。週末にかけてはハリケーン「ミルトン」がフロリダ州に襲来する中で供給懸念が高まったほか、イスラエルが10日夜の安全保障閣僚会合でイランへの攻撃内容を協議したと伝わったことが支えとなり反発する動きとなった。

NY原油チャート
出所:みんかぶ先物WTI原油先物複合チャート

 今週の原油相場は横ばいでの推移が想定されそうか。イスラエルがレバノンの首都ベイルートの中心部を空爆し、ヒズボラ幹部や指導者候補を殺害していると伝わっているほか、イランへの報復攻撃が警戒されていることは引き続き支えとなりそうだ。一方で米雇用統計に続き、CPIも堅調な内容となったことから利下げ期待が後退しており、ドル高進行していることは重しとなっているほか、8日の中国国家発展改革委員会の記者会見において強い景気刺激策が打ち出されず、上海株や香港株が一時急落するなど中国の景気先行き不透明感が強まっていることは嫌気されている。イスラエルがイランの核施設や石油関連施設を標的にするようなことがあれば急騰する展開が想定されそうだが、中東情勢への過度な警戒感は後退している中で足元では方向感を探る展開が想定されそうか。

 

 

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このコラムの著者

児玉 圭太(コダマ ケイタ )

国際法人部主任として国内商社や地場SS等を担当。
需給動向や石油現物価格などをもとに相場分析を行います。静岡出身。