[Vol.1831] 中央銀行の買いによる長期の上昇圧力も継続

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反落などで。70.64ドル/バレル近辺で推移。

金反発。米10年債利回りの反落などで。2,693.75ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。25年01月限は17,760元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。24年11月限は536.9元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1687.05ドル(前日比4.75ドル拡大)、円建てで8,103円(前日比15円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(10月16日 17時09分時点 6番限)
12,893円/g
白金 4,790円/g
ゴム 386.3円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 2,000円/mmBtu(24年12月限 10月15日17時54分時点)

●NY金先物(期近) 月足  単位:ドル/トロイオンス
NY金先物(期近) 月足  単位:ドル/トロイオンス
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「中央銀行の買いによる長期の上昇圧力も継続」
前回は、「有事、代替通貨起因の短期の上昇圧力は継続」として、FFレートとNY金(ゴールド)価格の推移を確認しました。

今回は、「中央銀行の買いによる長期の上昇圧力も継続」として、中央銀行による金(ゴールド)買い越し量の推移(2010年~)を確認します。

中長期的に上昇圧力をかけ続けているテーマが「中央銀行」です。中央銀行は全体として2010年以降、金(ゴールド)を買い越しています。買い越しとは、買った量が売った量よりも多い状態のことです。

下の図のとおり、ウクライナ侵攻が勃発したり世界規模でインフレが加速したりした2022年は統計史上最高となり、翌2023年はそれに匹敵する規模でした。2024年は上期(1~6月)として最高となるなど、近年は特に積極的な買いが続いています。

中央銀行が金(ゴールド)を保有する理由は、全体的には「長期的な価値保全/インフレヘッジ」「危機時のパフォーマンス」「効果的なポートフォリオの分散化」などです。金(ゴールド)が持つ、危機時に注目が集まりやすい特徴が、意識されているようです。

先進国の中央銀行の間で「歴史的地位」が高くなっているのは、彼らに金(ゴールド)は歴史が証明する安定した資産、という認識があるためです。

また、新興国の中央銀行は「制裁への懸念」「政策ツール」「国際通貨システムの変化の予期」などといった、先進国の中央銀行が選ばなかった選択肢を選択しています。これは「信用をいかに膨らませるか」に注力する先進国の考え方と、一線を画す考え方です。

中央銀行はさまざまな意図で金(ゴールド)の保有量を増やしています。1970年代後半に起きた、世界で蔓延(まんえん)する不安を払拭(ふっしょく)するために進んだ「実物資産への回帰」が、この時代でも起きていることがうかがえます。

図:中央銀行による金(ゴールド)買い越し量の推移(2010年~) 単位:トン
図:中央銀行による金(ゴールド)買い越し量の推移(2010年~) 単位:トン
出所:WGC(ワールド・ゴールド・カウンシル)の資料を基に筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。