[Vol.1988] 「低迷」が資産の額を大きくする不思議

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。米主要株価指数の反発などで。65.40ドル/バレル近辺で推移。

金反発。米10年債利回りの反落などで。3,346.90ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。25年09月限は13,805元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。25年07月限は479.8元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで2136.95ドル(前日比3.45ドル縮小)、円建てで10,279円(前日比96円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(6月10日 17時25分時点 6番限)
15,592円/g
白金 5,313円/g
ゴム 298.4円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 1,799円/mmBtu(25年8月限 5月27日15時39分時点)

●NY金先物 月足  単位:ドル/トロイオンス
NY金先物 月足  単位:ドル/トロイオンス
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「『低迷』が資産の額を大きくする不思議」
前回は、「資産の額が最も大きくなったパターンは?」として、積立シミュレーションにおける価格推移を確認しました。

今回は、「『低迷』が資産の額を大きくする不思議」として、積立シミュレーションにおける累積保有数量を確認します。

前回述べたクイズの答えは、「低迷後 反発パターン」です。最終的には、「上昇 継続パターン」は約428万円、「下落後 回復パターン」は約428万円、「低迷後 反発パターン」は約630万円となりました(どのパターンも、最終的には投資金の合計である360万円を超えた)。

このシミュレーションの結果における注目点は、二つあります。一つ目は、市場価格が下落しなかった「上昇 継続パターン」と、下落した「下落後 回復パターン」の最終的な資産の額がほぼ同一になったことです。

そして二つ目は「低迷後 反発パターン」という、長期間、市場価格が低位で推移した上、最終的な価格が「上昇 継続パターン」の3分の1、「下落後 回復パターン」の半分となったパターンの最終的な資産の額が、最も大きくなったことです(他パターン比1.5倍弱)。

これらの注目点の共通点は「市場価格の下落・低迷」です。「上昇・高止まり」の正反対の事象を受けて、最終的な資産の額が大きくなったのです。なぜ「下落・低迷」という一見すると投資の効率を低下させる事象が、最終的な資産の額を大きくしたのでしょうか。

言い換えれば、なぜ、「上昇・高止まり」が、資産の額を大きくすることに貢献しにくかったのでしょうか(資産の額は大きくなるが、「下落・低迷」があったパターンに比べて不利だった)。これらの問いに対する答えは、「保有数量」にあります。

以下は、三つのパターンの累積保有数量の推移です。最終的には「上昇 継続パターン」は約286グラム、「下落後 回復パターン」は約429グラム、「低迷後 反発パターン」は約1,270グラムでした。

これら最終的な保有数量が、それぞれの最終的な資産の額に大きな影響を与えました。先に述べたとおり、積立投資における最終的な資産の額は、最終的な「保有数量」に最終的な「市場価格」をかけて計算します。

つまり、このシミュレーションにおいては、価格面の優位性を高める「上昇・高止まり」よりも、保有数量を効率的に増加させる「下落・低迷」の方が、最終的な資産の額を増加させる原動力になったと言えます。

図:積み立てシミュレーション(3)(累積保有数量) 単位:グラム
図:積み立てシミュレーション(3)(累積保有数量) 単位:グラム
出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。超就職氷河期の2000年に、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして活動を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。「過去の常識にとらわれない解説」をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌、インターネットなどで幅広く、情報発信を行っている。大学生と高校生の娘とのコミュニケーションの一部を、活動の幅を広げる要素として認識。キャリア形成のための、学びの場の模索も欠かさない。