[Vol.1830] 有事、代替通貨起因の短期の上昇圧力は継続

著者:吉田 哲
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原油反落。中東情勢の緊張緩和を伝える報道などで。71.15ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。2,659.90ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。25年01月限は18,315元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。24年11月限は544.8元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1668.2ドル(前日比6.55ドル拡大)、円建てで8,016円(前日比4円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(10月15日 14時52分時点 6番限)
12,736円/g
白金 4,720円/g
ゴム 393.9円/kg
とうもろこし -円/t
(まだ出来ず)LNG 1,997円/mmBtu(24年12月限 10月09日17時55分時点)

●NY金先物(期近) 月足  単位:ドル/トロイオンス
NY金先物(期近) 月足  単位:ドル/トロイオンス
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「有事、代替通貨起因の短期の上昇圧力は継続」
前回は、「分断深化継続で金(ゴールド)は高止まり」として、2010年ごろ以降の世界分断発生とコモディティ(国際商品)価格上昇の背景を確認しました。

今回は、「有事、代替通貨起因の短期の上昇圧力は継続」として、FFレートとNY金(ゴールド)価格の推移を確認します。

最近、セミナーで講演をする機会がありました。講演後、聴講された方から寄せられた質問の中に、興味深いものがありました。「どうなれば金(ゴールド)価格は下落するのか?」という質問でした。歴史的高値圏で推移し続けている金(ゴールド)相場は、今後も上昇するかもしれない、しかし、どうなれば下落するのだろうか…という発想からの質問だったと思われます。

この質問への筆者の回答は実にシンプルで、金(ゴールド)相場を上昇させているテーマが、逆の方向を向いたら下落する、と返答しました。足元、価格を上昇させているテーマは、短中期的には有事ムードと代替通貨(しばしば代替資産も)、中長期・超長期的には中央銀行と見えないジレンマです。

これらの多くが今と反対の下落圧力をかけはじめれば、金(ゴールド)相場は下落すると、考えられます。これら全てが強い下落圧力を同時にかけた場合、大暴落する可能性すらあります。ですが、今は上昇圧力をかけていますし、今後も上昇圧力をかけ得ると筆者は考えています。

短中期的な上昇圧力は、「有事ムード」と「代替通貨」がもたらしていると考えられます。有事ムードの高まりは、激化のさなかにある中東での紛争とウクライナ侵攻がきっかけです。同ムードが高まると、資金の逃避先を模索する動きが強まります。そのとき市場では、逃避先になり得る金(ゴールド)を物色する動きが強まる傾向があります。

代替通貨を起点とした上昇圧力は、9月18日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で「利下げ開始」が決定したため、今後も継続する可能性があります。もともと米ドルと金(ドル建てゴールド)は世界共通のお金という共通項を持っているため、下の図のとおり、利下げ時は、米ドルを保有する妙味が低下して相対的に金(ドル建てゴールド)を保有する妙味が増し、価格が上昇することがあります。


図で示したとおり、Fed Watch Toolによれば、9月に始まった利下げの動きは、今のところ2027年までは利下げが続く見通しです。これは中期的に金(ドル建てゴールド)に代替通貨起因の上昇圧力がかかり続けることを示唆しています。

図:FFレートとNY金(ゴールド)価格の推移
図:FFレートとNY金(ゴールド)価格の推移
出所:FEDおよびLBMAのデータ、Fed Watch Toolの資料を基に筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。